黒岩五郎の言葉

「日経平均株価が史上最高値を更新し、34年前のバブル絶頂期の株価水準に戻った。」、「物価高が続く中、春闘では過去最高水準の賃上げ回答が相次いでいる。」といった景気の良いニュースが、最近、巷で流れています。

 アメリカの株式市場の値上がりや半導体の需要拡大への期待、最近の円安と好調な企業業績も影響し、新NISAによる個人投資家は金融機関に煽られて、「投資」というより「投機」になっているように見えます。また、テレビの画面には、一般労働組合同盟ボードの妥結の欄には「満額」という赤い字がずらりと並んでおり、上場企業の優秀な人材確保につなげたい思惑が感じられます。

 資産に余裕のある人々は更に資産を増やすよう気を遣い、優秀な人材は待遇の良い企業へ転職する光景が見に浮かびます。同時に、資産に余裕のない人はただ眺め、優秀でない人は低い賃金に甘んじて暮らすことを強いられる光景も目に浮かびます。1970年代に「一億総中流」などと言われた遠い昔から、今では日本の社会は先進国の仲間入りをし、格差社会にどっぷりハマっているようです。

そんな時代だからこそ、土岐市出身の俳優である田中邦衛さん(88歳没)が演じた、「北の国から」(脚本:倉本聰)での黒岩五郎の言葉を思い出します。『北の国から2002遺言』での五郎の言葉、「金なんか望むな。倖せだけを見ろ。ここには何もないが自然だけはある。自然はお前らを死なない程度に充分毎年喰わしてくれる。自然から頂戴しろ。そして謙虚に、つつましく生きろ。それが父さんの、お前らへの遺言だ。」です。

私には、「まめ蔵」が「自然」に置き換えられると思っており、死なない程度に毎年食わしてもらおうと考えています。資産に余裕もなく、さほど優秀でもない私が、謙虚に、つつましく生きる空間がここにはあります。これだけで、充分幸せなのですから。ほら、今日もコーヒー豆を買いにお客様が来店されました。