ベトナムのロブスタ

全日本コーヒー協会の統計資料によれば、2022年のコーヒー生豆国別輸入量は、1位がブラジルの112,032トン、2位がベトナム105,728トンとなっています。多くの方々は、ベトナムのコーヒー生産量が世界2位であることを知りません。しかし、実際には缶コーヒーやインスタントコーヒーの原料として、国内で広く飲まれているのです。

 ただ、日本が輸入しているブラジル、エチオピア、コロンビアといった産地のコーヒー豆が、レギュラーコーヒーに使用されるアラビカ種であるのに対し、ベトナムのコーヒーは殆どがカネフォラ種(ロブスタ)であり、強い苦みや独特な香りがあって、アラビカ種よりも低い価格で取引されています。

 そんなベトナムのコーヒー豆は、低品質だと言われているため、コーヒー豆の価格は業者依存になり、農家たちは高い価格で売ることが出来ませんでした。そんな状況下ですが、最近ではクオリティーの高いコーヒー豆を生産し、「ベトナムコーヒー」というブランドを高めようと努力している生産者も現れてきています。その一つが、VCUVietnam Coffee United)という団体で、ベトナム南部の地域で生産されるコーヒー豆の中から、厳選した高品質のコーヒー豆を日本などへ輸出しようとしています。

 その商社のブースが先月行われたSCAJ2023の中にあり、試飲したロブスタに印象深かったものがあったため、サンプルとして少しだけ送ってもらいました。それが先日届いたので、早速、焙煎をしてみたのです。密封された袋を開けると、中米などに見られるナチュラルの強い発酵臭を感じます。これまで焙煎したベトナムのコーヒーとは明らかに違いました。納品書の備考欄には「生豆はライトミディアム程度で焙煎すると、SCAJでご試飲いただいたものと近いお味を楽しめます。」とありましたが、ロブスタの苦みがどの程度か気になったため、それよりも少し深く焙煎してみます。

 焙煎日当日の豆は、強い香りと同時に苦味も口の中に広がりました。二日目の豆は苦味や発酵臭が少し落ち着いて飲みやすくなります。ただ、冷めてくると苦味を強く感じた後にロブ臭も追いかけてきます。やっぱりロブスタです。ただ、従来のロブスタとは明らかに異なるため、ベトナムコーヒーの新しいイメージにはなるかもしれません。そうすれば、ベトナムコーヒー農家の安定生産と生活を支え、ひいてはコーヒー豆の価値を高めることにもつながるでしょう。 

 でもね、まめ蔵で取り扱うには価格的に折り合いがつかないので、お店で提供するのは難しいというのが正直なところです。