米粉のバームクーヘン

 以前、恵那市三郷町の阿部農園でイチゴ狩りをした際、障害者や高齢者などが農業に携われるよう、国や自治体、法人などがそれを支援する農福連携について触れました。農福連携の取り組みが進むことで、障害者や高齢者、生活困窮者の働き口を創出できるとともに、農業分野では高齢化による後継者・働き手不足の問題を解消できると期待されているというものです。

 先日8月1日には、CBCテレビの「チャント!」内で、CBCドキュメンタリー「silentなバームクーヘン店」と題した放送がありましたが、そこでは、犬山市を中心に西尾市、名古屋市で農福連携の事業を推進しているココトモファームを取り上げていました。

 ココトモファームは犬山市の橋爪地区、そして入鹿池にほど近い今井という地区に広大な田んぼでお米が作られています。そこで一次産業(農業)として作られた米を、自社で製粉した生米粉からバームクーヘンへ加工する2次産業(工業)、さらには、加工された製品を販売する3次産業(サービス・販売)の店舗を愛知県内12店舗を構えています。

 このように、1次から3次まで一体化した産業として農業の可能性を広げようとすることを「6次産業化」(1×2×366次産業化)といって、農林水産省の6次産業化政策でも過去にココトモファームが取り上げられています。そして、農産物の6次産業化によって多様性のある雇用の創出することができ、「障害がある人もない人も一緒に働ける居場所を創る」ことを目指して、農福連携に力を注がれているということでした。

 CBCテレビで放送された内容は、そうしたココトモファームで新たな店舗を任された、ろう者の玉木浩人さん(59)さんと妻の千夏(56)さんが、開店前に期間限定で名古屋駅前でワゴン販売をする様子や、新店舗での店内の様子を映し出していました。映像を見ていたら実際に訪れてみたくなり、定休日に名古屋市守山区大字上志段味にある名古屋守山しだみ店へ行って来たしだいです。

 実は、この店舗は現在ハウスドゥ守山しだみ店の一部を利用して運営されているのですが、何年か前まではシフォンケーキの美味しい喫茶店として営業されており、何度か訪れてことのある場所だったのです。何だか不思議な気分になりながら入口のドアを開けると、3名のスタッフがお出迎えしてくれます。

 店内に入って商品を眺めていると、すかさず試食とお茶を出してくれます。私が手話で「ありがとう」というと、手話ができること知って色々なことを話してくれました。現在、ココトモファームで働いているろう者は三名で、この名古屋守山しだみ店にその三名が働いているそうです。店長の玉木千夏さんと、玉木浩人さん、そして仲西正克さんの三人です。少しの間でしたが、手話で楽しい会話をすることができました。

 ココトモファームの”ココトモ”は、”ここで友達になろう”の意味です。そして、シンボルマークの様々な色のモザイクには、”どんな人にも居心地のよい場所”という意味が込められており、社員のおよそ一割に何らかの障害があるといいます。ただ実際には、農福連携に取り組むには様々な課題もあり、当初は、・農作物の栽培に人手がかかる(職員の負担増)・農作物を栽培しても収益性が低く採算が合わない(施設の経費増)・将来的に農業で働きたいというニーズが無かった(就労準備型の方が人気)など、担い手が不足する農業と障がい者雇用をつなげることが難しかったようです。

 現在、6次産業化のモデルケースとして扱われていたり、短期間に店舗数を増やすなど、華やかな側面ばかりが目立っていますが、将来、こうした形態がスタンダードになることを期待しています。(商売は難しいですから。)