普通のお店

土岐市の広報に「ようこそ手話の世界へ」のコーナーが掲載され、手話の説明や聞こえない世界についてのコラムが始まったのが20204月でした。平成26年に市議会で「手話言語法」制定を求める意見書が出された経緯などもあって、手話を身近に感じてもらいながら、聴覚障害への理解を深めてもらうのがキッカケだと聞いています。

 当初は、簡単な日常会話で使う手話表現が取り上げられていましたが、今年度は「土岐市民の歌」の歌詞を1年分に分割して掲載されており、私も手話モデルを一部担当させていただきました。そして、今月号はコラムの原稿も依頼されていたため、ここに紹介しておきます。

「手話で会話できる喫茶店」

 『東京都には、聴覚障がい者と聴者がともに働き、主なコミュニケーション手段として手話を用いているコーヒーショップがあります。働く人もお客さんも、誰もが自分の居場所として感じられるようなそのお店は、聴覚に障がいのある方だけでなく、さまざまな方が利用されているそうです。いわゆる、ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包括)をあえて強調せず、文化として根付かせようとする姿勢がとても素晴らしいと思います。私は小さな喫茶店を経営しています。若い頃に手話サークルに加入し、聴覚に障がいがある方のみではなく、さまざまな障がいを持つ方との交流を経験することで、その人の立場を想像できるようになったような気がします。だから、障がいの有無だけでなく、年齢や性別、人種や国籍、宗教や趣味など、どのような違いがあっても、気軽に利用できる店づくりを心掛けています。』

 題名や原稿内容については一部校正されてはいるものの、概ね自分の意図する事が書かれています。主なコミュニケーション手段として手話を用いているコーヒーショップについては、いろいろと意見はあるものの、あのように形態で実現できるのは大手企業だからこそだと思います。ダイバーシティ(多様性)やインクルージョン(包括)を強調するかどうかは別にして、何よりも形にしていることが素晴らしいことです。 

 私の店は、小さな町の小さな珈琲屋です。一人で何もかも全て行っているため、一人で出来ることに限りがあります。けれど、一人だからこそ可能なこともあると思っています。普通のコーヒーを普通の価格で普通に飲める普通の珈琲屋。それが、普通に存在し続けることに意味があり、どんな人も気軽に利用できる状態があたりまえになること。そして、この小さな町にとって必要な珈琲屋になることが私の目標です。