美濃焼ど立派~珈琲街道?

昨日の「古墳散歩」ではないですが、古墳から出土した須恵器からも美濃焼に繋げている土岐市です。確かに、美濃焼は陶磁器生産量が日本一なので、自慢したいのは理解できますが、そのわりには知名度が薄いのも事実なのです。外国人の研修生に頼って生産している現場や、後継者のいない実情を知っている者としては、将来の展望が見えない地場産業でもあります。

 そんな美濃焼では、陶磁器製のコーヒー・ドリッパーを作っているところがあり、Googleで「美濃焼ドリッパー」と検索すれば、けっこうな数の画像が表示されてきます。私のような町の小さな珈琲屋にも、「こんなのどうだろう?」といって、様々なドリパーを見せてもらいましたし、僅かながら感想を述べさせてもらったことがあります。

 陶磁器産業の多くが家内工業的な事業所ばかりということもあって、手作り感が強く、黄瀬戸のドリッパーとドリップポットを組み合わせた品物は、正直、「買う人がいるのかな?」と思ったくらいです。店内の風景と一緒に写真撮影をしたいと言われたので、快く応じましたが、果たして売れたんでしょうか。

 織部焼のドリッパーを持参された方は、織部の釉薬が綺麗に出ていること自慢されていました。ところが、形が少し歪んでおり、リブも突起状に作られておらず、削って彫っただけの代物でした。「まあ、織部だから。」と、何でもありのドリッパーです。

 中には、青森の「藩士の珈琲」の映像をテレビで見て質問される方があり、手元にあった資料をお渡ししたこともあります。後日、桐箱に入った茶器道具セットのような品物を見せてもらいました。SNSを通じて一部の方に売れたようですが、量産される様子もありません。

 手作りのドリッパーと異なり、大量生産向けに鋳込み用石膏型で作ったドリッパーでは、取ってを付けると焼成時に変形するため、変形を想定した型作りをする職人技が必要なことも知りました。そのため、生地が厚いドリッパーや、そもそも取ってを付けないドリッパーが作られていることも知ります。

 コーヒー・ドリッパーの市場では樹脂製が多く、陶磁器を使用した商品の流通は少ないのです。そのうえ、ハンドドリップをする人口も限られますし、皿や茶碗のように複数購入することもありません。まめ蔵でコーヒー豆を買われる方に尋ねても、ハリオやカリタ、メリタのドリッパーを使用する方が多いようです。流行や個性的なドリッパーよりも、長く続いて手軽に入手できるドリッパーの方が使い勝手が良いのかもしれません。

 流行と言えば、先日、中国向けのドリッパーを地元企業に制作依頼された方によると、中国ではクラシカルなデザインや色合いが流行っているとのこと。サンプルを見せてもらいましたが、渋い色合いで、ドリッパーの底にはメイドインジャパンの刻印がしっかりありました。「美濃焼(Minoyaki)」じゃないところが、やはり知名度の低さを示していますね。 

 ある方が、地元で作っているドリッパーを揃えて、「美濃焼ど立派~珈琲街道」なんてものでPRしたら?なんていうことを言ってもらいましたが、そもそも美濃焼の知名度が低いうえに、地元での利用実態もほとんどないようでは、立派な催事にはなりそうもありません。ましてや、流行ってのが苦手ですから。私には松屋式の金枠が合っていますしね。