嗜好品だもの

嗜好品を広辞苑で調べてみると、『栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物。酒・茶・コーヒー・タバコの類。』とあります。当店で扱っているコーヒーは嗜好品であり、たとえ薬効があったとしても、それをウリにして販売することはありません。

でも、時々、「コーヒーって〇〇に良いって、テレビで言ってましたよね。」なんてことを話される方があります。そんな時は、「この本に詳しく書いてありますから読んでみてはどうですか?」と答えるのですが、誰一人といってよいほど読もうとされません。自分で確かめることを放棄し、テレビタレントや〇〇先生といった方の話を鵜吞みにする方が楽なようです。

私の妻は医療機関で働いていることもあり、「薬は毒だから。」といって、少々の風邪では薬を飲みませんし、子供達が熱を出した時も「今、体が戦っているんだから。」といって、傍らで心配する私を無視しておりました。確かに、体に異物が入る訳ですから、それを摂取することによる良い面と悪い面があるのは理解できます。

 酒もタバコもやらない私にとって、愛飲家や愛煙家の気持ちは理解できませんが、それぞれ楽しむための正当化する理由はあるのでしょう。コーヒーにも私のように美味しく感じる人もあれば、まったく受け付けない人もいることも承知しています。だからといって、「コーヒーの病気予防効果が認められました。」なんて、まるでテレビショッピングのような口上を述べたくはないのです。

 酒の飲み過ぎでアルコール中毒になった方や、タバコの吸い過ぎにより肺ガンで苦しんだ人も知っています。コーヒーだってカフェインの過剰摂取が問題になることもあり、何であっても、「過ぎたるは猶及ばざるが如し」なのだと思います。それが嗜好品であっても。だからといって、適量を意識する人ばかりではないことも知っています。だって、嗜好品は『栄養摂取を目的とせず、香味や刺激を得るための飲食物。』であり、「体に悪くっても摂取するんだぞ!」といった種類のものですから。むしろ、それで体を悪くしていることを自慢する人もいるくらいです。 

 嗜好品のコーヒーにある程度の薬効が認められていることも知っていますし、その知識に耳を塞ぐつもりもありません。だから、関係する本も知識の一つとして読んだりしますが、その知識を商品価値を高める材料にはしたくないと思っている珈琲屋でもあります。相田みつを的に言えば「嗜好品だもの」といったところです。