「コーヒー摘み取り」の絵

 日々の出来事など、とりとめもなく書き綴っている店主のブログです。そんな稚拙なブログにも関わらず、時々コメントをいただくことがあります。それも、何年も前のブログに対して。どうやって見て頂くことになったのか?正直、書き留めている自分自身が驚いてしまいます。

 先日も、2018310日のブログにコメントをいただきました。その日は、焙煎したグアテマラのコーヒー豆をハンドピックしている際、欠点豆の中からトウモロコシをみつけました。カウンターに置いてある「コーヒーの摘み取り」の絵を眺めながら、グアテマラの空の下で働く農夫を想像し、「トウモロコシの先住民とコーヒーの国民」(著:中田英樹)を読み返したという内容でした。

 今回、その本の著者である中田英樹氏から、次のようなコメントを頂戴したのです。『突然の書き込み、失礼いたします。ご紹介頂き、光栄に存じます。この絵がお店に飾ってあるとのこと。是非機会があれば、こっそりと拝見させにお伺いしたいと思いました。この絵もかなりの考えることがありまして。この絵を購入されたのは2005年頃ではないでしょうか?あの頃、この真上から見る俯瞰のアングルがブームになっていました。これを最初に採用した青年にインタビューしたことがあります。彼は、内戦中には、国軍のヘリコプターに乗って、このアティトランコ湖畔の山中に潜む、絶対に同じ村の顔見知りであるはずのゲリラを発見するという任務に就いていました。皮肉としか言いようのない、残酷な歴史の一片ですよね。コーヒーの花、私も見たことがあります。綺麗ですね。』というものです。

 「コーヒーの摘み取り」の絵は、開業前にいただいた小さな御土産用の絵です。あまりにも小さいのですが、コーヒー豆を収穫する真上からのアングルが気に入っていたので、知り合いの画材屋さんに頼んで額にいれてもらったものです。「餅より粉が高い」となりましたが、コーヒー産地であるグアテマラの「コーヒーの摘み取り」の絵だと、一人悦に入っていたのでした。

 その後、「トウモロコシの先住民とコーヒーの国民」という本に出会い、「コーヒーの摘み取り」の絵には、コーヒー・プランテーションへの出稼ぎを余儀なくされ、そこで重労働を強いられ、しかしわずかな収入しか得られない底辺の人々の歴史がそこに表現されているのだと知ります。

 そして今回、この真上から見る俯瞰のアングルがブームになったキッカケが、内戦中のヘリコプターから見えた景色だったと知り、さらに複雑な歴史が込められているように感じました。著者が「この絵を購入されたのは2005年頃ではないでしょうか?」と言っていますが、1996年に署名された和平合意により内戦終結になったものの、その後もしばらく履行されず、混沌とした時代背景を示しています。 

 そんなコメントを頂いたので、再び「コーヒーの摘み取り」の絵を見ながら、読み返し始めたのです。