thick layer(厚い層)

 ブラジルのコーヒー生産量は世界で一位を占めており、その割合は約36%と圧倒的です。1920年頃には世界の生産の80%を占めていたこともあり、ブラジルのコーヒーの生産量の多さは今も昔も変わりません。ブラジルでは収穫されたコーヒーの実を果実のまま天日乾燥する、ナチュラルといわれる方法が用いられます。その呼び方には色々あり、非水洗式、アンウォッシュド、ドライプロセスなどともいわれます。

 大まかな流れは、粗選別の後、天日干しや天日干し後に機械乾燥をおこない、最後に脱穀を行います。シンプルな工程なため設備投資を最小限にでき、コストを抑えられる点がメリットですが、乾燥が天気に左右されやすい点や、水含量が多いため乾燥に時間を要する点、脱穀を終えるまで未成熟の生豆を除外できない点などのデメリットもあります。

 コーヒーの実を天日乾燥させる場所はパティオといい、コンクリートやレンガでできた広場のことを指す伝統的なコーヒー豆の乾燥場で行います。地域によってはビニールシート上にコーヒー豆を広げて乾燥させることもありますが、ここで、コーヒー豆を太陽や風、地熱によって自然乾燥させるのです。

 今回、数量限定で取り寄せたブラジルのコーヒー豆は、「ヴィオレッタNo2」という商品で、乾燥方法がthick layer(厚い層)と呼ばれるものです。果実を約57cmほど重ね、乾燥を遅らせ発酵を促しています。乾燥が進むと、果実は水分を徐々に失い層が沈んでいきますので、乾燥速度を一定に保つため、果実をもう一度積み上げ、層の高さを戻します。こうして発酵率を上げることで、通常よりもコク、丸みのあるボディー、優しい甘味が加わるというものです。

 たったそれだけのことで違いが出るのかと思い、コーヒー生豆の入った袋を開けて匂いを嗅ぐと、他のブラジルの生豆では感じられない甘い香りがします。そして、テスト焙煎後に試飲してみると、確かにコクが増して丸みのあるボディーや甘味を感じました。カウンターに座っていたお客様にも試飲してもらうと、「ブラジルらしくない。」とのコメント。おっしゃるとおりなんですが、個人的には好きなコーヒーです。 

 そんな訳で、今週から在庫があるまで販売を開始することにしました。商品名の「ヴィオレッタ」は、ポルトガル語のヴィオレッタ(すみれ)だそうです。可憐な感じと音の響きから大人感、色っぽさ感も演出するものとして名付けられたそうです。実際に、大人感、色っぽさ感があるかは飲んでお確かめください。