祭りと信仰

 土岐市美濃陶磁歴史館で開催中の企画展、土岐市の文化財展『祭りと信仰』(124日~ 223日)へ行ってきました。子供の頃、お祭りの日はいつもワクワクしたものです。僅かながら小遣いをもらい、出店の屋台を廻りながら普段買い求めることのできない菓子類を買ったり、眺めたり、祭りの最後に行われる投げ餅を楽しみにしていたものです。子供にとっては祭りと信仰とは無縁のもので、夢の空間でしかありませんでした。 

 春・夏・秋・冬と季節ごとに大小様々なお祭りが地域で行われ、ちょうど今頃は「秋葉様」で祠の前で焚火をした大人たちの所へ駆け寄り、ミカンやとんのこ(赤飯の握り飯)もらいに行ったものです。そんな庶民の暮らしと信仰は、疎遠となった今では考えられないほど一体のものでした。 

土岐市美濃陶磁歴史館によれば、土岐市内に残る江戸時代の庄屋日記を読み解くと、様々な信仰が年中行事に組み込まれると同時に、突然降りかかる病気や災害を払うために神仏へ祈る様子も記されているようです。また、毎年の秋祭りは一大行事で、花馬や神楽の奉納に加え、芝居や芸能も行われ、人々にとって最大の娯楽であり、信仰の対象であり文化の中心的施設として、地域の神社は大切に維持されてきたといいます。 

この企画展では、そんな庶民の暮らしとともにあった信仰の形を、神社に残る棟札や祭礼用具、様々な奉納品などから紹介しています。中でも、土岐市内の特色としては、かつて秋祭りで行われていた花馬奉納があります。花馬は、陶磁器などの輸送に馬が使われた昭和30年頃までは市内各所で奉納が行われ、今でも神馬を飾った馬具が多く残されています。今でも花馬を行っている地区はあるようで、お客様から花馬を引きながらご祝儀を集めていると聞きます。 

また、美濃焼産地としては陶製の奉納品が特徴的で、ユニークな陶製狛犬や神猿が展示されており、制作された町や作者の名前から現在の窯元が想像されます。さらに、物資輸送や人々の往来が盛んだった旧街道筋には、往時の繁栄を偲ばせる神社やお堂があり、住民が資金を出し合い、社殿の建て替えや仏像奉納が行われており、普段見ることのない十王尊も見ることが出来ました。 

今年はコロナ禍とあって、妻木町で行われた八幡神社の流鏑馬では、「コロナ退散」と書かれた的を馬上から矢を射るなど、時代とともに祭りのあり方も変わってきています。ただ、過疎化や高齢化、地域行に対する無関心という傾向もあり、祭りを受け継ぐことが難しくなっている今日、私が子供の頃に感じたワクワク感は無くなっていくのかもしれません。