喫茶の一族

 京都市中京区河原町には、昭和25年創業、京都の老舗喫茶店「六曜社珈琲店」があります。入口には清水焼のタイルが貼られ、1階の店舗と地下の店舗と別れており、メニューも入口も独立し、地下の店舗は夜にはバーになります。そんな老舗の珈琲店が親子3代に渡って、継ぐ・続けるに向き合った、店と家族のドキュメントが『京都・六曜社三代記 喫茶の一族』(京阪神エルマガジン社)です。 

 本の帯には「100年続く店は どうつくる?」と、なんだか田口護氏の「カフェを100年、続けるために」かぶってしまう気もしないではないですが、こちらの方は、どこかの書評によれば、「終戦後の満州、混沌の中に突如表れた屋台の喫茶店に始まり、運命の出会いと引き揚げ、京都での喫茶店開業に試行錯誤、家族経営のすれ違いと困難、1960年代末の混沌を東京で過ごした名物マスターの青春時代、河原町通の変遷に三代目の苦悩まで、まるで朝ドラを地で行くような個性豊かなキャラクターとドラマの連続。喫茶店という場が生み出す磁場と文化が描かれた傑作評伝。」という訳で、だいぶ趣が違います。 

昭和・平成・令和と長きに渡り喫茶店を続ける間には、まあ色々な出来事があるものだと思い知らされます。たがだか開業から5年しか経っていない若輩者(年齢は還暦過ぎ)の私には、全く思いも及ばないことばかりです。サラリーマン時代に管理者として人を使い、事業所を回していく苦労が多少分かっているだけに、一人で何もかも行う今のスタイルにした私にとって、さらに、家族だからこその難しさは想像を超えるものです。 

 この本は、今年の91日に発行されていますが、京都がもっと好きになるメディアKyotopi828日付記事で、「六曜社」三代目店主、奥野薫平さんのインタビューが掲載されています。そこには「ありがたいことにコロナがあっても、常連さんはやってきてくれたんですよ。嬉しかったですね。毎朝、この席にはあの人が座っているという見慣れた風景があって、店を閉めてしまうとその人の日常がなくなってしまう。だから定休日以外は一度も店を閉めなかったというのもあります。」といったコロナ禍での様子や、「日常を奪わないという意味では、感染からお客さんやスタッフを守るのも大事なこと。空調管理やソーシャルディスタンスの保持、消毒などの対策をきっちりとして、お客さんにも協力してもらって、営業時間も変えずにいた。『六曜社はずっと居場所を作っていてくれた』というイメージがあるから、自粛していた人たちが戻ってきてくれるのも早かったような気がします。」と、「六曜社」に対するお客様と自分の想いも語っています。 

 また、「最近、ある企業とコラボをしてネルドリップのためのコーヒー豆を焙煎&ブレンドされています。ある企業というのが、岐阜県に窯を持ち、陶磁器の製造・販売する「suzugama」さん。」とあるように、コーヒー豆とネルドリップ抽出器具とのセット販売を企画されています。三代目にとっては、創業者や二代目と違って継ぐ・続けるに向き合う時間が重くのしかかるため、変化に躊躇なく対応することも必要になるようです。こりゃ大変だ。 

 そんな事を考えながら、100年はおろか体力の続く限り「まめ蔵」を続けることを目標にしている呑気な私は、珈琲遊戯の「プロビデンシアどす」を呑み、旭軒製菓輔の「くりこ餅」を食べ、「京都にも行ってみたいな~」などと思っているのでした。 

 ちなみに、陶磁器の製造・販売する「suzugama」は隣町にあったので、ちょっと覗いてきました。若者が丁寧に作っている素敵な工房です。 

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コメント: 2
  • #1

    帰山人 (水曜日, 16 9月 2020 16:45)

    スピール届きました。ありがとうございます。
    まぁ、妻木の新たな風として頑張ること自体はよろしいんじゃないかと。
    六曜社とコラボする意味合いはサッパリわからないけれど…
    でも、もしも三代記が朝ドラになったら、このスピールも値打が上がる(笑)
    いずれにしても、ご紹介ともどもの対応に御礼申し上げます。

  • #2

    まめ蔵 (水曜日, 16 9月 2020 16:51)

    私も六曜社とのコラボの関係は意味不明です。さらに、ネルにしたのも分からない。でも面白そうだったので送りました。値打ちが上がるまで保管しておいてください。(笑)