久しぶりの臨時休業

 今日は下石町のお盆で、町内にある常福寺に出かけ、法要後に配られる施餓鬼旗(せがきばた)をもらい、お寺からの帰り道となるお墓参り際に墓石の傍らに飾ります。例年、その日は午前11時から営業を再開しますが、妻が「お盆だから、たまには休んだら?」というので、素直に臨時休業することにしました。今年は新型コロナウイルスの影響もあって、コーヒーのイベントもなくなり、これまで臨時休業することも殆どありませんでしたので、久しぶりに定休日と合わせた二連休となります。 

 時間もあることから遠出をしたいところですが、やはり三密によるコロナ感染が気になり、人出の多い観光地へは行く気持ちになりません。世間では、観光庁による国内観光需要喚起を目的とした「Go To Travelキャンペーン」が間もなく開始されますが、「Go To Troubleキャンペーン」にならなければ良いと思っています。妻から、「今年中の旅行は無いから。」と釘を刺されているため、我が家には無縁のキャンペーンとなりそうです。 

 そこで、月曜日の定休日では出来ないことをしようと、近くの美術館等へ行くことにしました。 

 先ずは、多治見市のセラミックパークMINO内にある岐阜県現代陶芸美術館です。こちらでは、「ルート・ブリュック 蝶の軌跡」展が8月16日まで行われています。本来7月5日までの開催予定でしたが、新型コロナウイルスによる影響で期間が変更となったことから見ることが可能となりました。 

 ルート・ブリュック(19161999)は、オーストリア人の父とフィンランド人の母のもとに生まれ、幼少期をストックホルムで過ごします。蝶類の研究者で画家でもあった父の影響で自然や美術に親しみ、学生時代は建築家になりたいという夢を持ちますが、周囲から反対されて断念し、グラフィックデザインに転向します。すると、その繊細で詩的な世界観がアラビア製陶所の目にとまり、1942年に美術部門のアーティストとして入所します。 

 しかし、陶芸の経験も知識もなかったことから、アラビア製陶所で懸命に技術を習得し、1950年前後に職人たちと共に独自の成型技術を開発して、巧みな釉薬技法とスタンプやエングレービングによる加飾でオリジナルの陶板をつくりました。果物や鳥、建物など日常的なモチーフを描いた陶板です。そして、50年代後半からは具象から抽象表現へと変化していきます。もともと「建築家になりたい」という希望をもっていたこともあり、1970年代後半から教会や市庁舎など公共建築のための大型壁画を手がけます。数千数万という膨大な数のタイルを手作業で組み合わせ、繊細さと力強さと共存するモザイク壁画は、高度な技術と類まれな造形・色彩感覚が融合しています。 

 現在、日本巡回展のためにフィンランドで製作された、ドキュメンタリー映像「ルート・ブリュック タッチ・オブ・ア・バタフライ(RUT BRYK : Touch of a Butterfly)」(製作:エスポー近代美術館、タピオ・ヴィルカラ ルート・ブリュック財団)がオンラインで公開されています。ブリュックの生い立ちと人生、主要な作品についてわかりやすく紹介し、よりプライベートな目線で、ブリュックの人となりやクリエイションの根源に触れることができます。また、北限の風景を切り取った美しい映像は、私たちを「まだ知らないフィンランド」へといざなってくれます。(約50分) 

 次に向かったのは、多治見市御幸町3丁目の御幸公園前に、先月仮オープンした多治見西浦記念館です。NPO法人多治見西浦伝承会により、629日に期間限定で仮オープンしており、~仮オープン記念企画展「明治天皇と多治見」~ 期間:2020629()~719()を見ます。明治天皇が伊勢への御巡幸の途中に多治見の西浦家にお泊りになり、西浦家が「行在所」となった日が629日だそうで、この日を記念し、明治天皇御巡幸の様子と西浦焼等の展示を楽しむことのできる企画展となっています。記念館は三つの蔵を改装して展示スペースとなっており、受付をされていた多治見西浦伝承会の方にたっぷり説明をしてもらいました。 

 雨が降ったり止んだりの一日でしたが、美術館や記念館を見ながら、いつもと違った空間に浸るのもいいものです。