待ち時間に観た映画

 定休日の月曜日、約6か月ぶりに眼科へ受診しました。朝9時に行くと、既に受付ロビー内はいっぱいで、カウンターで待ち時間を尋ね、約1時間待ちだと知ることになります。相変わらず混み合う時間帯だと嘆きながら、あらかじめ用意したFire 7 タブレットを取り出し、ダウンロードしていたアニメ映画「言の葉の庭」(20135月公開 監督:新海誠)を見ることにしたのでした。

 この「言の葉の庭」は46分という長さで、待ち時間の間に見るには丁度良い作品です。内容はというと、『少し大人びて、少し複雑な家庭に暮らす高校1年生の孝雄が、靴職人の夢を持ちながらモヤモヤした高校生活の中で、雨の降る日の1限目は学校をさぼり、靴のデッサンをしに、新宿御苑の中にある東屋へ通っていた。そこで朝から缶ビールを飲んでいる年上の女性と出会い、去り際に投げかけられた万葉集のある一篇に、孝雄が引き付けられます。どちらともなく雨の降る朝に逢うようになって、孝雄はこの女性に惹かれ、靴を作ってあげたいと思い始めるのでした。それぞれが抱える思いと現実との狭間で、二人が苦悩する姿を描いている。』といったところでしょうか。

 それよりも、新海誠作品とあって、雨の表現が豊かです。特に水面や、濡れたタイルには目を奪われます。一部CGでは?と思える映像は、開始の1カットで分かるくらいです。それに、色々な雨の形態にもこだわっており、激しい雨音や雷音もいい演出でした。

 去り際に投げかけられた万葉集の一篇は、2513番の「鳴神(ナルカミ)の光りとよみてさし曇り、雨さへ降れや。君は留らむ」であり、終盤に孝雄が返したものが、2514番の「鳴神の光りとよみて降らずとも、我は止らむ。妹し止めてば」でした。雷が鳴って雨が降れば、あなたを留めておけるのにという想いに対し、雷が鳴って雨が降らなくとも、あなたが言えば留まるのに。今では失ってしまったような恋心ですが、「恋」はその昔「孤悲」と書いていたそうで、孤独に悲しいと表わす通り、愛に至る前の孤独さを誰かに癒し求める物語です。

 エンドロールの後に、「物語に登場する公園は新宿御苑をモデルに描かれておりますが、実際には新宿御苑での飲酒は禁止されておりますことにご注意ください。」と書かれていたのをみつけ、急に現実の世界に引き戻されます。同時に、高校時代に恋心を抱いていた古典の新任教師のことを思い出し、現在の年齢を暗算したとたん、考えるのを止めてしまう自分がいるのでした。