■ よだかの星

 店舗内に飾る絵は、宮沢賢治「よだかの星」を題材にした、イラストレーター中山尚子さんの作品の一部を選びました。そのご縁で、「よだかの星」の作品すべてのイラスト画像データをいただきましたので、ストーリーとして字幕付きの動画に編集してみました。原作のセリフ部分はできるだけ残しましたが、8分間にまとめたためにお見苦しいところがあるかもしれません。お許しください。

 「よだかの星」という作品は、前半で弱肉強食の生き物の世界を描き、中盤では、よだかが星に救済を求める姿を描き、後半では、よだかが自らの力で舞い上がり、燃えて星になるという、賢治らしい少々難解で奥の深いものとなっており、普通の小説や物語の顛末でなく、宇宙観とか、生命観をも感じる作品です。

 メルヘンチックな絵とは裏腹に、とても切ない話ではありますが、現実に社会とは本当に冷酷な一面を抱えており、賢治の頃も今も、世の中は、不条理なことで溢れています。時代は大きく変わっても、人が持つ心の闇は変わらないんだということかもしれません。

 そんな読者の解釈に想像の余地を残させる作品を、店舗に飾る作品に選んだかというと、もちろん中山さんの作品が好きだということもあるのですが、手話サークルで障がい者との関わるなか、自分自身も差別意識と向き合いながら生きている事への戒めであったり、飲食店という立場から、食物連鎖を意識し同時に感謝していくことを忘れないためでもあります。

 また、コーヒー豆はコーヒーノキという植物なのですが、それを栽培して流通させ、自分たちの口に入るためには多くの人が関わりますが、その関わり方には「よだか」と同様に上下関係も存在しています。そうした現実を理解しながら、自分がお店を通してどのように表現し、何を実現していくか「よだかの星」と違ったストーリーを描いていくのが目標です。