もんげー

 岡山旅行の際に倉敷へ行ったのですが、倉敷の美観地区から倉敷駅へ帰る途中の商店街で、「もんげーバナナ」を販売する店を発見しました。数年前からマスコミで何度か取り上げられている1本600円のバナナです。「もんげーバナナ」は商品名で、「奇跡のバナナ」とも呼ばれており、岡山県の農業法人D&Tファームで作られています。「もんげー」とは岡山県の方言で「ものすごい」という意味で、確かにものすごい値段にビックリ!一般に売られているバナナが1本60円程度なので、何と10倍もするのです。普通なら見るだけで素通りしますが、旅行先とあって財布の紐も緩んでしまい、「旅の記念に!」と買ってしまいました。 

 このバナナが「もんげー」と名付けられた理由はいくつもあります。バナナの栽培に適した年間の気温1630度の熱帯生まれの果物が、氷点下にもなる日本の冬でも栽培ができること、さらに、味そのものも普通のバナナとは大きく異なり糖度が25度以上もあって、普通のバナナの約1.5倍だそうです。しかも「もんげーバナナ」は無農薬で育てられるため、皮が薄くてえぐみがないので、皮をむかずにそのまま食べられるといいます。もっとすごいのが生育のスピードです。普通のバナナは苗を植えてから実が成るまで1年半もかかりますが、このバナナは何とその2倍の速さで成長するので、約9カ月で収穫できるから収益の最大化が期待できるとか。 

 そんな「もんげー」美味しさを期待して購入したので、直ぐその場で食べたいところでしたが、店員さんから「2、3日後が食べごろですよ。」勧められたため、昨晩まで待って食べたのです。皮まで食べられるというので輪切りにして母親と三人で食べたものの、全員が???「これが600円?」と意見が一致。ちょっと期待のハードル上げすぎたのか、あまりにも普通すぎて残念でした。「希少」とか「COEのコーヒー」といって高っかいコーヒーを飲んだ時に感じる残念さと同じです。 

 味はともかく、日本で栽培が可能になった「もんげーバナナ」の生みの親は、農業法人D&Tファームの代表である田中節三さんが開発されました。田中さんが長年かかって確立した日本国内でもバナナが栽培できる方法は「凍結解凍覚醒法」と命名され、特許を取得しています。これはバナナの苗を約180日間かけてマイナス60度までゆっくり冷却します。人工的に苗に氷河期を体験させることで植物本来の遺伝子のチカラを覚醒させようというものなんだとか。この方法で作られたバナナの苗は全国各地で栽培が始まっているようです。 

 農業法人D&Tファームでは「凍結解凍覚醒法」で様々な果実を試験栽培しており、その中にコーヒーもあります。ハウス農園ではティピカを栽培しており、生育過程をホームページで見ることができ、通常日本国内でよりも早く成長する様子が分かります。確かにすごい事なんでしょうが、画像で見る限りではハウス栽培のため、露地栽培が可能なのか?サビ病などの耐性はあるのかなど不明な点が多いので何とも言えません。 

 ただ、日本国内でコーヒー栽培をすることで価格上昇は必ずあり、そこまでしても国内栽培のコーヒーを飲みたいとは思わないのが正直な気持ちです。「もんげーバナナ」と同様に、価格に見合う美味しさではないと思えてならないし、そもそも日常生活で飲むには値しないのでは? 

 岡山で「もんげーバナナ」に出会い、「もんげー」コーヒーを飲む時代がくるのかな?などと思ってみるのでした。