油亀へ行く

 現代陶芸美術館に置いてあったフライヤー(チラシ)の企画展、「珈琲のための器展 ~お酒はなくても、生きていける~」21日~322日)が行われている、岡山市内にあるアートスペース油亀へ行ってきました。

 気になるものは見てみたい、確かめたいという単純な理由で、「岡山まで行こうと思う。」と妻に話すと、「じゃあ私も行く!」というので、日帰りの計画を変更して一泊二日で岡山周辺も旅することになったのです。岡山は初めていく場所でもあり、企画展を楽しんだ後、倉敷の美観地区やジーンズで有名な児島の街を巡ることになりました。 

新幹線で岡山駅に到着すると、駅前には桃太郎御一行の銅像が並んでいます。そこを横目にしながら岡山駅前のバス停へ行き、路線バスに乗って就実高校中学前で降り、そこから歩いて5分程で会場に着くはずでした。ところが、バス停の数が多くてどれに乗ったら良いのやら?路線図を見ても目的のバス停が見つからず、結局地元の方に聞いて乗車したものの、車内アナウンスが気になって仕方がありません。テレビの路線バス乗継の旅がどんなに大変なのか、少しだけ分かった気分になったのです。 

就実高校中学前のバス停で降りてから5分程歩くと、目的の築140年の古民家をリノベションしたギャラリースペース油亀に到着しました。高山や白川郷のような重厚な古民家を想像していたら、意外にも平屋造りの横長な建物です。軒先のトタン屋根が錆びており、ギャラリーといったイメージとは遠い感じです。入口のガラス戸には亀さんマークの甲羅部分に「油」と書いたロゴがあり、なんだか子供の頃の自宅を思い出しながらガラスの引き戸を開けます。 

・・・狭い、天井低い、畳敷きの床が沈む。そんな古びた家屋には一面にコーヒーカップが並んでいます。中には陶器のドリッパーなども。今回の「珈琲のための器展」では、北海道から沖縄まで、全国各地の珈琲をこよなく愛する陶磁器・木工・ガラスの作り手たち60名以上の作品5000点以上が並びます。『一杯の珈琲に、心がふるえる。一杯の珈琲に、心が揺さぶられる。いつしか、琥珀色した魔法の飲み物なしでは、生きていけなくなった。珈琲なしの人生なんて!そんな珈琲愛好家、すべての人に捧げますおう』という紹介文のとおり、一杯のコーヒーを飲む時間が特別なものになるような器が並び楽しくなります。よ~く見ると、土岐市の作家さんの作品もありました。 

そんな器を見ていると、入口横の土間にある珈琲喫茶からコーヒーのいい香りに誘われます。このイベントの期間中、珈琲喫茶室では各地の珈琲屋さんが出張しており、22日・23日は広島市の自家焙煎珈琲店MOUNT COFFEEさんが出店しています。コーヒー一杯500円(お菓付き)で、今回のコーヒーはミャンマー・ブラクハニーを中煎りと深煎りで提供されています。妻と二人でそれぞれ注文しましたが、まめ蔵の焙煎度は両方の中間くらいでしょうか。 

アートスペース油亀に来て一番驚いたのが、このキャラリーへ来てから訪れる人が絶えないことです。それも若い女性が多い!狭い、低い、沈むスペースに、なんで若い人が集まるんだろうか?不思議に思って様子を見ていると、コーヒーカップを買う訳でもなく(お客様の作家さんの話ではメッチャ買ってくれるんだそうです、珈琲喫茶室でコーヒーを楽しむ人が目立つだけです。「お酒はなくても、生きていける」といった言葉と不釣り合いな光景を見ながら、「田舎者のおっさんには理解できないのか?」などと考えてみるのでした。