鶴橋散歩

 せっかく定休日に大阪へ来たのですから、少しばかり寄り道しようと思い、2年前に妻から「大阪に行くならキムチを買って来て!」と頼まれて、揚句に迷子になりそうになって歩いた鶴橋に行くことにしました。前回は、初めてのお使いよろしく、頼まれたキムチを買っただけで何も食べることなく帰ったため、今回は、鶴橋グルメを堪能しようと歩き出します。 

大阪の鶴橋といえば日本で最も大規模な韓国人街です。日韓併合後の1920年代、大阪が工業都市として「東洋のマンチェスター」と形容されるほど発展していた時期に、労働者として朝鮮から渡ってきた人々が最初だと言われています。また、この頃には済州島と大阪を結ぶ直行便が就航されていたこともあって、済州島や慶尚道の出身者が多かったそうです。 

 戦後、交通の要衝でもあった鶴橋駅周辺には「闇市」と呼ばれる露天商が立ち並び賑わいを見せます。その後、日本と朝鮮系、中華系の商人によって商店街が形成され、現在では鶴橋西商店街、鶴橋商店街振興組合、東小橋南商店街、大阪鶴橋市場商店街振興組合、高麗市場、大阪鶴橋卸売市場共同組合という6つの区域に分かれています。今回は、こうした事前情報を基に商店街の地図を印刷し、JR鶴橋駅を降りたのです。 

 中央出口から出たものの、手元にある地図とは配置が合いません。一度駅に戻り、再び周りを見渡して目印となる商店街を探し、やっとの思いで6班通を歩くと、華やかな韓国衣装やその生地を売る店が並んでおり、左右をキョロキョロしながら歩きます。最初の四辻を右に曲がって見えてきたのが店頭で調理をする光景です。 

ここは韓国惣菜の店「土井商店」で、チヂミやキムチをはじめ韓国食材が店頭に並びます。調理をしている前のカウンターに座り、韓国ソウルの市場で食べるよう気分を味わいながら、ニラチヂミとトッポギを楽しみます。チヂミは作り置きしてあるものを焼き直し、食べやすくカットして提供してくれるため、熱々を食べることができ、ちょっと辛いトッポギのタレに付けながら、ホクホクしながらあっという間に完食です。 

鶴橋といえばホルモンと焼き肉です。そこで、近鉄駅方面の鶴橋西商店街へ向かうため、薄暗い高架橋を潜り焼肉の臭いが立ち込めるエリアに入ります。「さて、どこに入ろうか?」と迷って歩いていると、再び先程の店へ戻ってしまい、またもや迷路に迷い混んでしまいました。そこで、今度は目の前に見えた店にしようと決めて歩き始め、目についたのが「鶴橋ホルモン本舗」です。 

焼肉屋がひしめいているこのエリアの住所は、生野区ではなく天王寺区下味原町になります。昼間ということもあって準備中の看板が目立ち、夜には賑やかな様子になるだろうと想像しながら店内に入ると3階に案内されました。狭く急な階段を上って座敷にあがると、既に数人の客が食べています。その食べているメニューにつられて「9種のホルモンランチ」(1200円)を注文し、もう腹いっぱいの状態です。 

最後には、前回来た際に妻に頼まれたキムチの店に行けなかったこともあり、近鉄鶴橋駅の東出口近くにある「岡村商店」を見つけてキムチを購入し、これで何とか名誉挽回です。 

夜の鶴橋も魅力的ですが、ほとんど下戸の私では帰宅することが困難になるため、昼の散歩が丁度良いのでした。