ワークショップへ

 定休日を利用し大阪へ出かけ、㈱富士珈機 大阪本社で行われた、コーヒービジネスについてのワークショップに参加してきました。講師はスペシャルティコーヒーの生豆商社である、ワタル株式会社の井上英司氏です。 

 受講対象としている人は、「自家焙煎店を開業したいけど、どんなお店にしたらいいのか決まらない。」とか、「美味しい珈琲を焙煎しているのに、なぜか儲からない。」ということなので、少々不向きな感じを持たないわけでもないのですが、「コーヒービジネスモデルを科学的に考察するワークショップです。」だったり、「過去の事象を参考にし、現在の市場とニーズを読み取り、では今、何をすべきなのか。」という、前向きな言葉に興味を持ったのです。 

 一人でお店をしていると、自分がやるべき仕事だけ黙々とキッチリやって、ややこしい事に関わらずに自由にしたいと思いがちです。開業する前に多くの自家焙煎店を巡りましたが、私と同じように一人で切り盛りしている方の多くが、人とのコミュニケーションが得意でない、勉強する事が苦手、人や会社、ルールに縛られたくない、愛想良く人とにこやかに話すのが出来るくらいだったら、こんな仕事してはいない、なんて個性的な人にも出会いました。 

 そんな「変われない、変わらない」店主にはなりたくないので、たまには外の空気を吸って、多少居心地が悪くても、客観的に自分を見つめ直す環境を作りたいと思って参加した訳です。ですから、このワークショップを経験したことで急にお客さんが増えたらいいな、といった淡い期待は抱いていないのです。 

 ワークショップを受講するまえに、事前に宿題が与えられたのが次の課題でした。 

1:現在開業前です。駅前に10坪程度(家賃15万円程度)の挽き売り店を開業希望でしたが、ちょうど良い立地に30坪(家賃25万円)の物件が出てきました。貴方なら、この物件を借りますか?借りませんか?その理由も明記してください。 

21.の物件を借りたと仮定します。貴方なら追加される20坪でどのような事をしますか? 

3:開業して2年が経ち、売り上げが下がり始めました。貴方なら、どのような打開策を投じますか? 

4:開業して3年が経ち、貴方のお店で販売するメインのブレンド豆の販売量が安定しません。貴方ならどのような打開策を投じますか? 

5:開業して4年が経ち、販売が安定した頃、近所にコーヒー屋ができました。貴方ならどのような打開策を投じますか? 

6:貴方の「美味しいコーヒー」の定義を教えてください。 

7:貴方の目指すコーヒー屋はどのような店舗ですか?箇条書きで回答下さい。具体店名で回答でも可 

 これらの回答について個々に触れることはありませんでしたが、参加者が自分の答えを導き出せるような講義が行われ、その資料には冒頭「コーヒービジネスは構造的に儲からない」という否定的な言葉から始まります。大手コーヒーチェーンやコンビニコーヒーの台頭によって、小規模の珈琲屋にとっては、人事生産性の悪さ、販売チャンネルの多さ、差別化の難しさ、EC(イーコマース)の反応の悪さ等々、解決すべき課題が山積みです。そのため、「儲かる」定義により異なりますが、一般サラリーマン並に収益があるのは10%以下だそうです。これが、約2500社といわれる珈琲屋の現状です。 

 そうした現状を理解したうえで、「何を 誰に どのように」売っていくかを明確にしていくことが基本であり、コーヒーを通じて「物が事になっていく」商売を考えるべきだといいます。これまで、思いつきのような楽観主義で進めてきたことに反省しながらも、自分の行ってきた施策を見直してみる貴重な時間となりました。 

 今回まで様々なコーヒー関連のセミナーを受講してきましたが、切り口の異なる内容も良いものです。珈琲屋を長く続けるためにも。