気になる存在

 多治見市にある現代陶芸美術館へ訪れた際には、出口付近に置いてある各地の美術館のフライヤー(チラシ)を手に取っては、「何か面白い企画はないものか?」と眺めています。そんな中に、岡山市内にあるアートスペース油亀の企画展「珈琲のための器展 ~お酒はなくても、生きていける~」を毎年見つけては、ずっと気になっていました。 

 この企画展「珈琲のための器展 ~お酒はなくても、生きていける~」(今年は21日~322日)のサブタイトルは、「お酒はなくても、生きていける」という言葉です。下戸のような私には、「本当にそうだ!」と合いの手を入れたくなるようなメッセージではないですか。そのうえ、珈琲のための器展に展示される特徴的なカップを持ってポーズをとっているおじいちゃんが、何とも言えず可愛らしい! 

 そう思っていたら、フライヤーの写真のモデルが、今年から若い(年齢不詳)の男性に替わっています。「あのおじいちゃんはどうしたの?」と気になってしかたがありません。調べてみると、おじいちゃんの名前は野崎薫さん。大正元年10月のお生まれで、2010年の第1回目からずっとモデルになっている近所に住んでいる方だそうです。コーヒーが大好きな野崎さんは毎日歩いて喫茶店に通っていたそうです。 

 そんな野崎さんも2019年のフライヤーの表紙を最後に、716日に逝去されたようです。満106歳の夏でした。高齢にも関わらず愛煙家でもあり、20189月には日本最高齢の喫煙者としてTVに出演されたこともあるそうです。 

ちなみに、今年のモデルは「インド料理SPICE 成瀬さん」と紹介されています。どうやら、昨年に行われた企画展「カレーのためのうつわ展 ~絶品なうつわ、襲来。~」(105日~1110日)で、特別イベントとして出店された、島根県のインド料理SPICEの店主のようです。年齢が若いせいか「お酒はなくても、生きていける」という言葉には説得力を感じませんね。 

なお、アートスペース油亀は、岡山市北区出石町にある築140年の古民家をリノベ―ションしたギャラリーで、様々な作品を展示販売されています。油亀という名前の由来は、亀さんという人が営んでいた油問屋からだそうです。北海道から沖縄まで、全国各地の珈琲をこよなく愛する陶磁器・木工・ガラスの作り手たち60名以上の作品が、その数5000点超も集められます。珈琲好きの作家が作った珈琲のための器が集まる訳ですから、こちらも気になるところです。