珈琲で地域おこし

 週末の旅行先である城崎温泉へ行く途中に立ち寄ったのが、兵庫県豊岡市出石町の出石城下町です。西国に勢威をふるった守護大名・山名氏の本拠地として、近世には五万八千石の但馬の雄藩として繁栄した、「但馬の小京都」と呼ばれる場所でもあります。 

 この出石城下町のある豊岡市は、平成179月に国指定の特別天然記念物・コウノトリが自然放鳥され、人里で野生復帰を目指す世界的にも例がない壮大な取組みが始まりました。また、城下町をはじめ、城崎温泉、竹野浜海水浴場、神鍋高原スキー場、たんとう花公園など、豊かな地域資源を生かすために、平成26年度から地域おこし協力隊の制度を導入しています。 

 そんな協力隊の中には、日本最古の磁器といわれる(言っている)出石焼と珈琲と地域活性化をからめた、「出石珈琲」と名づけた出石オリジナルブレンドを提供するカフェを、2019年度中に設立予定の方もいるようです。現在、オリジナルブレンドを各種イベント限定で出店中で、11月には出石の雑貨屋の軒先で出店したり、12月にはお寺で出石珈琲付きのヨガイベントを計画中のようです。 

 でも、珈琲で地域おこしといっても、その珈琲が出石焼きのような昔からの名産でもなければ、歴史的な珈琲文化との関連性もないと、単に地名に〇〇珈琲と付けただけで意味合いがよく分かりません。結局、観光客にウケるような商品として販売するだけとなり、そうすることが地域おこしとなるのか疑問が残りました。 

 以前、この地区の地域おこし協力隊をされた方で、出石の空き店舗を利用して物産店を開き、全国各地の特産品と出石町住民の手作り品を販売し、地元住民と観光客を結びつける場にしたいと取り組まれました。しかし、来店されるのは観光客ばかりで、地元の人はあまり来なくて思うような交流拠点にはできず閉店したようです。 

 嗜好品であるコーヒーを「珈琲」と漢字表記し、文化的なイメージを仮に少しは持たせたとしても、地域の全ての人がそのコーヒーを飲むわけでもなく、地域おこしの目標がどこにあるのか想像すら出来ませんでした。全国各地で地域の〇〇珈琲とやらを目にするたびに、そんなことを思ってみたりするのでした。 

 地域を元気にすることが、一部の人の商売繁盛をさせることなのか、地域の名前だけをメディアに出して有名になることなのか、それ以上に、そのコーヒーが美味しいのかどうか気になったしだいです。