珈琲店タレーランの事件簿6

 『珈琲店タレーランの事件簿』(著:岡崎琢磨 宝島社文庫)を読み始めてから何年になるのやら。「コーヒーをこよなく愛する青年。偶然入った珈琲店『タレーラン』で、長年追い求めた理想の珈琲と、魅惑的な女性バリスタ切間美星に出会う。美星が推理を披露する場に立ち会ったことで、その聡明な頭脳に惹かれ、以降しばしば『タレーラン』を訪れるようになる。」こんな感じの物語に惹かれて読み続けきましたが、途中あくびをすることもあり、そのまま眠りにつくこともあり、気付いたら第5巻まで読んできました。 

第1巻:珈琲店タレーランの事件簿 また会えたなら、あなたの淹れた珈琲を(20128)主人公の美空と青野が出会い、美空が背負う過去の傷を払拭する。 

第2巻:珈琲店タレーランの事件簿 2 彼女はカフェオレの夢を見る(20134月)※家族に焦点を当てた謎解きが多く登場。 

第3巻:珈琲店タレーランの事件簿 3 心を乱すブレンドは(20143)一冊で一つの謎を解くシリーズ初の長編ミステリー。 

第4巻:珈琲店タレーランの事件簿 4 ブレイクは五種類のフレーバーで(20152)今までに起こった事件のその後や過去の登場人物が再登場。 

第5巻:珈琲店タレーランの事件簿 5 この鴛鴦茶がおいしくなりますように(201611)短編ミステリーでありながら、全編を通じて青野の中学時代の初恋相手である、眞子に関するミステリーがちりばめられた作品。 

 そして、『珈琲店タレーランの事件簿 6 コーヒーカップいっぱいの愛』が3年ぶりに発売となり、「もういいか?」と思いながらも読むことになってしまいました。 

ある日、オーナーの藻川又次が突然倒れてしまう。病院での検査の結果、狭心症を発症しており、冠動脈バイパス手術を受けなければならないという。すっかり弱気になってしまった70歳の藻川は、姪の美星に、とある依頼をする。四年前に亡くなった愛する妻・千恵の生前の謎の行動。美星とアオヤマは、藻川の願いを聞き届けるために調査を開始する。千恵の行動を追って、京都、浜松、そして、舞台は日本三景のひとつ「天橋立」に。 

なんだか、もうこれだけでテレビの2時間ドラマを観ているようで、ついつい読み進めてしまう衝動に駆られてしまった反面、珈琲店タレーランの事件簿らしくない!バリスタ切間美星が手動のコーヒーミルで「コリコリコリ」と豆を挽きながら謎解きを進め、推理を終える都度に「その謎、たいへんよく挽けました」と言うのが定番のなに、「割れたコーヒーカップから始まった一連の謎、すべて大変よく挽けました」では、決め台詞に力が無いのです。 

「いまのお話が、私が必要としていたコーヒー豆の最後の一粒でした」とパズルをコーヒー豆に替えたとしても、ちょっと無理な設定や、謎解きの途中での「おや?」と思わせる意図的なほどの流れなど、よくある刑事ものドラマみたいで、最後に「やっぱりね!」の言葉しか出てきません。 

そんな事をブツブツ言いながら、カウンターの奥で、私は白磁のコーヒーカップを磨いているのでした。