明石焼き?たこ焼き?

 先日、UCCコーヒーアカデミー神戸校に行った際、めずらしく店の前に並んで外食しました。いつもなら、会場近くにあるイケアのフードコートで、ホットドッグとドリンクのセット(200円)で済ませるのですが、1時間程予定よりも着いたこともあり、三ノ宮駅前にある、さんプラザ地下1階の明石焼きの店「たこ焼たちばな」へ行きました。 

 せっかく神戸に来たのだから、やはり地元で知られた食べ物にしたいと思い、店の前に来てみると、既に何人もの方が順番待ちをしています。しばらく並んで待っていると、店員さんが「一人ですか?」、「カウンター席が一つ空いたので先に入ってもらいます。」と、運よくおカウンター席へ案内されます。 

 席に着くなり「一人前ですか?」と間髪入れず注文を聞かれ、「はい」と返答したものの、店内に貼られたメニューを見ると「たこ焼き」とドリンクしかないので、選択肢は何人前で注文するしかなかと気付きます。直ぐに、急須っぽい器に入っただし汁と三つ葉が出され、しばらくすると、板の上に整然と並べられた「たこ焼き」が運ばれてきます。 

メニューの張り紙の横に、「蛸は明石の活き蛸」と書かれていたので、その蛸を味わいながら食べてみるかと箸をにぎります。以前、妻と共に姫路城を見に行った際、明石市に立ち寄って老舗の明石焼きの店に行った経験から、明石焼きを崩さず上品に食べるのは駄目なことは知っていました。まず半分に割って、出汁を一杯に吸わせ三つ葉と絡めて口へ運びます。勿論、出汁も一口。お茶漬けを食べてるような感じでしょうか。 

 そうやって「明石焼き」を食べ店外に出た際、店の看板をみながら「なんで明石焼きの表示ではなく、たこ焼きにしているんだろう?」と疑問に思います。そこで、セミナー会場で席が隣になった地元の方に伺うと、神戸では、出汁につけて食べる「明石焼き」を、普通に「たこ焼き」と呼んでいるそうです。また、今のように出汁椀が別に出るのではなく、神戸では最初から大きめの椀の出汁の中に、たこ焼き数個が入った状態で出されることが多かったのだそうです。「へ~!」 

私が食べた「たこ焼きたちばな」では、たこ焼きの出し方こそ「たこやき台乗せ」、だし椀が別につくスタイルに変わりましたが、今でも明石焼きではなく「たこ焼き」の名前を大切にしており、昔から食べている神戸っ子にとっては、「たこ焼き」を「明石焼き」と呼ぶのには抵抗があるということでした。 

ちなみに、明石観光協会によると『江戸時代の末期から明石の重要な産業の一つとして「明石玉」が作られていました。「明石玉」とは、卵の白身を接着剤に硝石などを固めて作られた模造サンゴのことで、かんざしなどの装飾品に使われていました。明石焼(玉子焼)の起源は諸説ありますが、当時、大変人気を得ていた「明石玉」を作る過程で大量に残った卵の黄身と、小麦粉さらに明石でたくさん捕れるタコを入れて作られたものが、明石焼(玉子焼)のはじまりと言われています。』というように、明石でも「明石焼き」と言ったり、「卵焼き」とも言うそうです。