星の王子さまを読む

 かなり久しぶりに、『星の王子さま』(著:サン=テグジュペリ 訳:内藤 濯)を読んでみました。最初に読んだのは、24歳頃に友人から勧められて読み、その後一度読み返したでしょうか。しかし、読み返したところで独特の世界観に馴染めず、どことなく歯がゆい思いをしたものです。

 ところが、社会人として長く生活していると、王子が出会った星の登場人物である、

  1. 自分の体面を保つことに汲々とする王様

  2. 賞賛の言葉しか耳に入らない自惚れ屋

  3. 酒を飲む事を恥じ、それを忘れるために酒を飲む呑んだくれ

  4. 夜空の星の所有権を主張し、その数の勘定に日々を費やす実業家

  5. 1分に1回自転するため、1分ごとにガス灯の点火や消火を行なっている点燈夫

  6. 自分の机を離れたこともないという地理学者

 といった人物に私自身も出会う経験をします。 

 そして、王子が地球を離れた場所で見た際に、111人の王様、7,000人の地理学者、90万人の実業家、750万人の呑んだくれ、31,100万人の自惚れ、かれこれ20億人の大人が住んでおり、電気が発明される前には、6つの大陸に462,511人の点燈夫を見つけたように、この小さな珈琲屋にも、たぶん同じ割合で訪れる人が居ます。サン=テグジュペリのいた時代と、今も変わらない地球にいることを気づかせてくれます。 

 王子はキツネから、「なつく」、「ならわし」、「大切なものは、目に見えない」ことを教わります。「なつく」というのは「絆を結ぶ」ことであり、仲良くなることで、キツネにとって王子さまは、ほかの10万人いる男の子とは違う特別な存在となり、「黄色く色づく麦畑を見て、王子の美しい金髪を思い出せるなら、仲良くなった事は決して無駄なこと、悪い事ではなかった」と仲良くなることの意味を教えます。 

 「ならわし」についてキツネは、「ある一日を、ほかの毎日とは違うものにすること、あるひと時を、ほかの時間とは違うものにすること。」といい、キツネにとっての天敵である猟師が毎週木曜日には猟をしない日とすることから、その日は安心してブドウ畑まで出かけることができるのだと教えます。 

 さらに、「ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばん大切なものは、目に見えない。」といい、王子が故郷の星に置き去りにしてしまったバラの花が、あれこれとワガママを言い、世話を焼かせてくれたおかげで、王子にとって、そのバラの花は特別な存在になったことに気付かせます。一番大切な、費やした時間という目には見えないものだと知るのです。 

そんな、「秘密」を王子はキツネから教えられるのでが、私は友人・知人・家族から教わったのかもしれません。だからこそ、カウンターに座ったお客さまと「絆を結び」、「ならわし」として、時間の許す限りコーヒーに関するイベントに出かけては、「大切なものは、目に見えない」からこそ、コーヒー産地やその国の文化・歴史を知ることで、コーヒーカップの琥珀色した飲み物の先を語り伝えたいと思っているのです。

さて、次回読んだ時には、どんな感想を持つのでしょうか。