ファーメンテーション

 9月11日から13日の間、SCAJ2019(正式にはSCAJ ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション 2019)が行われることから、今年も会場へ行って様々なコーヒーを飲もうと思っています。SCAJ2019ではコーヒーに関する展示や競技会、産地セミナーが行われますが、今回はファーメンテーションに注目しながら、その違いを感じることを課題にしています。

 そもそもファーメンテーション(Fermentation)とは発酵のことで、酵母・細菌などのもつ酵素によって、糖類のような有機化合物が分解して、アルコール・有機酸・炭酸ガスなどを生ずる現象です。コーヒーの発酵は、通常コーヒーチェリーのネバネバ部分を剥がすときに様々な発酵方法が行われており、主にドライファーメンテーション(乾式発酵)とウェットファーメンテーション(湿式発酵)などがあります。

 最近では、この発酵の工程の違いを示す言葉として、エアロビック・アナエロビック・カーボニックなどと、何だかダイエットに効きそうな呼び方がされて、体重を気にしている私はついつい気になってしまいましたが、直ぐにそんな効果が無いことが分りました。要は、精製途中の発酵工程を工夫することで、コーヒーのフレーバーに特徴を持たせようとするものです。しかし、上手く発酵処理が出来れば良いのですが、発酵させすぎると逆にフレーバーを壊してしまうこともあるため、ファーメンテーションはコーヒーの生産処理工程でかなり注目されているのです。

 エアロビック(Aerobic)ファーメンテーションは好気性発酵と言われ、酸素に触れた状態での発酵プロセスです。摘み取ったコーヒーチェリーと他の豆のミューシレージや水と共に浸け置いて醗酵させます。1日過ぎたあたりからコーヒーからガスが発生してブクブクと泡立ってきます。(動画で見ると泥水に泡がブクブクしてる)こうやって2日間ほど漬け置き醗酵させます。

 アナエロビック(Anaerobic)ファーメンテーションは嫌気性発酵と言われ、酸素を遮断した状態での発酵プロセスです。摘み取ったコーヒーチェリーをエアロビックのようにタンクに入れて水で覆い、タンクに逆止弁を取り付け、中身が空気に触れないように密閉した状態で醗酵させます。ミューシレージの発酵によって発生する炭酸ガスの圧力によって、パーチメントコーヒーの中に通常以上のミューシレージ成分を浸透させようというのです。

 エアロビックとアナエロビックは似ていますが、空気(酸素)の有無によって生きられる微生物や菌とそうでないものがあり、醗酵工程でのその違いが風味に影響してくるようです。また、一緒に加えるミューシレージや水の有無、チェリーとタネのどちらの状態で漬けるのか、どの品種で行うのかなどによって最終的に出来上がってくるコーヒーの良し悪しに影響してくるので、これまでカッピングしたアナエロビックでも、シナモンの香りやイチゴミルクの香りなど、全く別物と感じるものもありました。
 カーボニックとは、カーボニックマセレーション(Carbonic Maceration)のことで、日本語で言えば炭酸ガス浸漬法でしょうか。ミューシレージを除去した後、ステンレスのコンテナにコーヒー豆を入れてCO2を注入して密閉し、一貫性のある管理された環境下に置くことで、フレーバーを発達させることができる点です。 

 こうしたファーメンテーションは、元々はワインの醸造技術で行われたものであり、それをコーヒーの精選処理に応用しているのです。味覚表現やテロワールといった言葉など、ワインに真似ることでコーヒーの存在価値を高めたいのでしょうが、コーヒー全体ではほんの僅かな数量にしかならず、多くの人が飲むことのないコーヒーなのかも知れません。でも、そんなコーヒーを飲んでみたい私です。

 ところで、SCAJ2019の産地セミナー情報はいつになったら開示されるんだろう?臨時休業にする日が決まらない!