payを考えてみる

 いまや、新聞やテレビで見聞きしない日がないのが、「キャッシュレス」です。新しいサービスが次々と生まれ、数年前までは考えられなかったQRコード決済が急速に普及し、ペイペイやLINEペイが利用者への大規模な還元キャンペーンに乗り出しています。また、2020年春には楽天ペイアプリにスイカが搭載されてチャージもできるようになるなど、QRコード決済の覇権争いが混沌としてきました。

そうした、送金サービスを提供する銀行以外の事業者が先行する中で、銀行が主導するQRコード決済サービスの先陣を切ったのは、2017年7月からスタートした横浜銀行の「はまペイ」、2018年3月から福岡銀行が「よかペイ」、そして、2019年5月からゆうちょ銀行が「ゆうちょペイ」として導入しています。今後さらに増え、導入予定を含めると11行がサービスを開始するそうです。 

お店ではAirレジを使用しているため、そうしたキャッシュレスには現在26種に対応可能ですが、いまのところ導入予定はありません。Airレジでは、「振込手数料月額固定費0円 決済手数料業界最安水準3.24%~3.74%」とPRしています。

 さらには、「201910月から20206月末までのキャッシュレス・消費者還元事業実施期間中は、通常3.24%または3.74%の決済手数料が実質2.16%に。今までの決済手数料より1%以上もおトクにご利用いただけます。」、「キャッシュレス・消費者還元事業実施期間中は、お客様がクレジットカードや交通系電子マネー等をご利用の際、カード発行元から支払額5%相当のポイント還元が実施されます。加盟店様の負担なく、お店の集客力アップを支援いたします。」と、メリットばかりが強調されてはいるものの、客単価の低い事業所においては、決済手数料分の回収をどうするかが課題となります。

 そんなタイミングで、「〇〇ペイ」さんの営業マンがやってきました。新規加盟店応援キャンペーンとやらで、決済手数料0%をアピールし、「どんどん導入されています!」と押してきます。そこで、「決済手数料0%じゃ利益があがらないでしょ?事業スキームはどうなっているの?」と尋ねると、「親会社の〇〇さんは大金持ちですから、儲けなくてもいいんですよ!」と訳のわからない回答です。ダメだこりゃ!と思いながらも、導入する予定が無いことを伝えてお帰りいただきました。202010月以降は有償化する場合がありますと書いてあるのに、メリットだけしか話さない営業マンは信頼できません。メリット・デメリットがあるなかで、そのバランスを判断することが正しい選択ですから。

 韓国では店舗決済のほぼすべてがキャッシュレスで、中国でも電子マネーが急速に普及しており、その近隣諸国の中にあって、日本の小売販売業の8割は依然として現金で決済されているのです。そうした現金での習慣を打破しようと各社が競っているものの、種類が多くなればなるほど混沌とし、普及はままならないのではないかと思っています。いずれ数種類に淘汰された時に、改めて考えようと今は静観しているのです。

 そもそも、この国では紙幣と硬貨が人々の日常生活に深く根付いており、将来的にどこまでキャッシュレス化が進むのでしょうか?お年玉、ご祝儀、お賽銭などなど、金額だけでなく、縁起を担いだ新札旧札の扱いや、三・五・八といった紙幣の単位への拘り、お賽銭だって「ご縁がありますように。」と50円や55円なんてのもあります。これもQRコードで読み取るんでしょうか?だったら賽銭箱は無くなるの?

 そんな単純な理由だけでなく、キャッシュレス化が進まない理由には、スマホのバッテリー問題であったり、セキュリティへの不安や個人情報の漏えいなどが挙げられるでしょう。地域性や商圏といった環境も踏まえ、当店においては、まだまだ時期尚早といったところです。