遅ればせながらSDGs

 名古屋市のJICA中部において、「コーヒー危機とSDGs」というテーマでコーヒーサロンが開催されます。当初は欠席するつもりでしたが、背中を押されて参加することにしました。その参加を躊躇していた理由は、2017年の世界経済フォーラム(ダボス会議)以降、大手企業が「我が社はSDGsに取り組んでいます。」という文章やロゴマークが急激に増えてきたからです。

 これは、ダボス会議の場で、「SDGsの推進により12兆ドルの価値、38千万人の雇用が創出される」との推計が出たことが一つの契機となり、経済界がSDGsにコミットするようになったのです。同時に、多岐にわたるアクターに対し、SDGsに積極的に取り組むメリット、取り組まないリスクを計算高く判断したからにほかなりません。

 外務省が作成したSDGsの資料には、20165月に内閣府に持続可能な開発目標(SDGs)の推進本部を立ち上げ、201612月にSDGs実施指針が決定されたばかりです。SDGsの趣旨や理念を学習する段階、社会への普及に一段と注力する段階あたりであるはずが、今年の1月からは「我が社のSDGsの取り組みは!」といったPRが目立ち、既にSDGsの実質的活動が行われているかのような錯覚を覚えます。 

ところが、経済産業省が201812月に行った中小企業のSDGs認知度調査によれば、84.2%が「全く知らない」と答えており、日本の90%を占める中小企業の実態をみると、表面上のSDGs活動と現実がとてもかけ離れているのです。また、朝日新聞の今年3月の調査においても、「SDGsという言葉を聞いたことがあるかという質問に『ある』と答えた人は19%」しかありません。8割以上の人が知らない中で、一部の企業側の論理でSDGsの理念とは異なるイメージ戦略に利用されてしまう危惧を持ちます。今の流れで行けば、従来の社会貢献活動や企業の社会的責任(CSR)の一環だと誤解されたままになりそうです。

 そもそも、SDGsは、2015年に期限を迎えた国連の「ミレニアム開発目標(MDGs)」を前身としており、開発途上国向けに設定された貧困、飢餓といった課題に寄り添った上に、さらに、気候変動、技術革新(イノベーション)、働きがい(成長・雇用)という先進国の課題も内含する広範囲な目標にして、経済界に開発途上国への投資を促す目的があったはずです。

 しかし、現実は「SDGsは知らないところで行われている事」になっているし、知らない場所では、従前の施策にSDGs17の目標をパズルのように組み合わせているだけで、何にも変わっていないのです。17の目標をイメージしたSDGsのカラーホイールバッジを付けている人を見かけたら、ぜひ聞いてみたいものです。「17のゴール・169のターゲットはなんですか?」って。まあ、こんな田舎にはバッジを付けている人はいないか?それに、コーヒーサロンが開催されるJICA中部のスタッフには声をかけられないか?ヤブヘビだもの。

 今は、「遅ればせながらSDGs」ってとこじゃないかな?