カレーから吉岡コーヒーまで

 妻から、毎回「子供っぽい!」といわれるのが、カレーの日は毎回お代わり大盛りになること。そして、残ったカレーは翌日の朝食となり、「よくカレーばかり食べるね!」と追い打ちをかけられます。外食でカレー専門店にでかけることもありましたが、最近は外食自体が減ったこともあって、大好きなインドカレーの店にも覗かなくなりました。

 ところで、日本にあるインドカレー屋の多くが、実はインド人が調理してないことを最近知りました。店の看板には「インド料理の店」と書いており、店内はサイケデリックな内装、インドミュージックがエンドレスで流れている中で働いているのは、意外にもネパール人だったのです。

 日本のインドカレー屋にネパール人が多い理由としては、ネパールはインドと隣り合わせの国であり、国境を面していることからノービザでインドに入国できるそうです。そして、ネパール人はインドで料理人としての修行を積みます。それは、日本で外国人が働く就労条件の中に、10年以上料理修行経験がある料理人については就労ビザが発行されるという条件があるためです。一攫千金を夢見たネパール人は日本でインドカレー屋を開きに来るという事のようです。

  じゃあ、インド人のインドカレー屋は無いのか気になります。これにはインドに古くからあるカースト制度が関係し、外国へ行く際に必要となる「パスポート」は、上位カーストのみ発行が許されているため、低位カーストの人間は国外に出ることができないといいます。だから、日本で働くインド人のイメージといえば、IT企業で働くエンジニアか貿易商ということになるのです。

 そこで、ふと思ったことは、「ネパールのことって意外と知らない」ってことでした。ネパールといえば、世界最高峰のエベレストをはじめ、地球上で最も標高の高いヒマラヤ山脈を有する山岳国家、そして、仏陀(ぶっだ)であるゴータマ・シッダールタが生まれた場所として知られる、インドとの国境近くでネパールの南部にルンビニという町くらいです。

 世界地図で見ると、東、西、南の三方をインドに、北方を中国チベット自治区に接する西北から東南方向に細長い内陸国。面積は北海道の約1.8倍、人口は2,930万人(2017年)と山岳地帯なのに人口は思った以上に多いのです。公用語はネパール語ですが、地理的要因もあってか、多民族かつ多言語、多宗教国家で、民族とカーストが複雑に関係し合い、ヒンズー教や仏教、アニミズムなどが混在しています。主な産業は農業であり、ヒマラヤのトレッキングツアーなど観光業も行われています。

 そんなネパールでは、出稼ぎ労働者からの送金がGDPの約30%を占めていたり、都市部にヒト・モノ・カネ・情報が集中し、国民の約80%が住む農村部や山岳部との格差が拡大しているところ、11年間も内戦が続いたことなど、中米等のコーヒー産地と似通った点を多く感じました。そこで、ネパールのコーヒー生産量を調べると、生産量は466トンの世界第57位(2017FAO)と少ないながら、標高の高い場所でコーヒーが作られています。

 20154月には、地震の影響等により農地や農業用灌漑施設等が大きな被害を受けたため、日本政府はODAにおいて、食料安定供給のために政府米の供与や、道路の復旧工事、教育支援等を行っています。そうした国としての支援の他に、国内のNGOによる活動の中には、ネパールのコーヒー栽培を援助する団体も存在します。

 

〇日本でネパールコーヒーが広がる

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〇生産量増加のために「農園を拡大」できる

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〇必要な「人手」が増える

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〇「雇用」が生まれる

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〇「自立」できる環境が整っていく

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〇支援への「依存」から卒業

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〇自助努力による「自立」が進んでいく

 

 こうしたNGOのような団体で活動する人々もいれば、個人でネパールのコーヒーを仕入れるため、毎年収穫期になると現地へ夫婦で出かけている人がいます。それが、名古屋市瑞穂区駒場町にある「吉岡コーヒー」です。

 という訳で、気になったら直ぐに行動を!と、中央線に飛び乗って千種駅で降り、地下鉄東山線を今池で地下鉄桜道線に乗り換え、桜山駅を降りて徒歩数分で店舗を見つけます。ドアを開けて開口一番「ネパールのコーヒーを下さい!」と言おうとメニューを見ると、何とネパールの文字が抹消されています。ニュークロップが来月以降に入荷する為に品切れだとか。頭から噴き出る汗を拭きながら、意気消沈したのでありました。

 気を取り直してニカラグアとケーキを注文し、店主にネパールのコーヒーについて尋ねると、ネパールとの関わりは現地でコーヒー農園をしている日本人の池島さんという方が、突然お店に「現地の人のボタさんと一緒に作っているコーヒー豆を扱いませんか?」と訪れたことがきっかけだそうです。その後、ご夫婦でネパールに訪れ、2012年から毎年コーヒーの実がなるころに訪問と仕入れを継続しているそうです。一か月ほど日本を離れることから、その間は臨時休業となるようですが、自分にはとても真似できません。だって、コーヒー産地へ行くことよりも、お客様と会話を楽しむことが出来ない事の方が寂しいではないですか。

 カレーから吉岡コーヒーまで繋がりましたが、肝心なところでネパールのコーヒーに辿り着くことができないという、何とも締まらない結果となりました。まあ、自分らしくていいけど。