コーヒーは発酵食品漬け

 『コーヒーの科学』(著:旦部幸博)には、「コーヒーは発酵食品」という頁があります。「コーヒーの香味には精製中に生じる発酵が意外に大きく影響することに気づきます。(中略)湿式精製ではこうして作られた成分が水槽の中で薄まることで、フローラルでフルーティーな香りが生豆に付加されます。(中略)乾式の場合、果実自体が持っている酵素による追熟や発酵とともに、(中略)果実が乾燥していくにつれ果実中の成分が凝縮され、一部が生豆に移行することで湿式よりもコクのある濃厚な味わいになるようです。」

このことを実感するようになったのは、ブラックハニーや中米・アフリカ産のナチュラルを取り扱うようにからです。そして、カッピングセミナーで嫌気性発酵処理したコーヒー豆に出会い、さらにコーヒーは発酵食品であることを実感しました。正直、どこまで意図的に発酵させるのか?と思ってしまうほど香りを付加させています。

 そんな、コーヒーを科学的に論じた「コーヒーの科学」は横に置き、コーヒーと遊ぶをメインにしている私は、コーヒー豆に発酵を後漬けしたらどうなるかが気になり、今回、日常手に入る発酵食品を使用して、「コーヒーは発酵食品」ならぬ、「コーヒーは発酵食品漬け」を試してみることにしたのです。 

使用したのは、 

・ヨーグルト(ビフィズス菌Bb-12使用) 

・甘酒(砂糖を加えていないもの) 

・味噌(塩分ひかえめ) 

 他にも、身近な発酵食品といえば漬物や納豆があるものの、漬物は塩分が多いことで味噌と被ってしまいそうなことや、納豆はさすがに嫌な匂いがしそうだという印象で試しませんでした。 

 まずは、水出しコーヒー用のパックにコロンビアの生豆を50g入れ封をし、小さいタッパーに3種類の発酵食品とともに漬け込み、3日間冷蔵庫で保存します。その後、生豆を取り出して天日で半日乾燥させ、銀杏煎りで手網焙煎をしました。(これくらいが丁度良いのです)3つ共通して感じたことは、焙煎中の香りは何故か「味噌!」です。いったい何を焙煎しているんだろうか?と思うほど味噌の香りがしました。 

そして、ヨーグルトは水っぽくなっていたことから乾燥が十分ではなく、時間をかけたにも関わらず水分が均一に抜けなく、ハンドピックをすると残ったのは30gしかありません。また、甘酒は生豆に糖分が付着して表面が直ぐに焦げてしまい、コーヒー豆の色合いの変化が分かりにくくなります。 

そんなこんなありながら、抽出して試飲してみることにしました。 

■酸味:甘酒>ヨーグルト>味噌 

■苦味:味噌>ヨーグルト>甘酒 

■甘み:ヨーグルト>味噌>甘酒 

(※あくまでも個人の感想です。) 

 焙煎時の味噌風味は少なく、甘酒は甘さよりも酸味が強く名前負けか?ヨーグルトは強い酸をイメージしたが、意外にもやわらかな酸が苦味と甘みとバランスが良い。味噌は塩分を心配したが、気になることもなく店のコロンビアよりも飲みやすくなっていた。 

今回、「コーヒーは発酵食品」から始まり、「コーヒーは発酵食品漬け」へと遊んでみました。けれど、コーヒー産地では精製中に生じる発酵を意図的に利用し、自然な状態で付着する酵母ではないものを色々と加え、その香味を確かめていると聞きます。これでは、私が遊んでいる「コーヒーは発酵食品漬け」ではなく、フレーバーコーヒー(店の名前でない)になってしまうではないか?と思うのでした。

くだらない事をしながらも、少しは真面目に考えてみたりして。