もう一つの新元号発表

 新元号発表とともに、テレビでは「令和」とついた名前の人の感想を聞いたり、新元号の焼き印が押された饅頭の便乗商売の取材を行っています。中には「令和」を付け加えた歌を作るグループや、令和ブレンドなるコーヒー豆を売る店まで、ここぞとばかり新元号フィーバー(もう死語か?)状態です。

 一方、菅官房長官による記者会見では、菅氏が画面に向かって左側に「令和」と掲げると手話通訳士と重なり、数秒間見えなくなったことから、一部の人からNHKに対しバッシングが起こっているとか。まったくもって自分勝手な世相を表しています。

 私は、新元号発表の記者会見を自宅のテレビで見ていましたが、見ていたのは官房長官ではなく、その傍らの手話通訳士の方でした。手話通訳を読み取って、新元号をどのように手話で表すのかを注目していたのです。しかし、案の定、新元号の「令和」は指文字で「レ・イ・ワ」と表現していたのでした。

 全日本ろうあ連盟のホームページを覗いてみると、新元号「令和」の手話表現については、42日(火)1400に、全国手話研修センター・日本手話研究所から発表されるとのことであり、改めて確認することにしました。日本手話研究所は、全日本ろうあ連盟が1969(昭和44)年に設置した手話法委員会以来の歴史を持ち、現在も厚生労働省の委託を受けて標準手話の確定と普及に取り組んでいる組織です。聴覚障害者の日常生活の利便を図るため、手話表現方法について、研究、造語を行うとともに、その普及を図って聴覚障害者福祉の促進に寄与することを目的としており、刊行物は手話の学習教材として利用しているところです。

 そんな訳で、本日午後2時に日本手話研究所のホームページを見てみると、手話で表現する元号発表を見ることができました。「令和」の手話は、指先を上に向けて5本の指をすぼめた片手を、胸の脇に出し、前に動かしながら指先を緩やかに開くものです。予想していたものは、指文字の「レ」で円を描いて和を表現するものでしたが、見事に外れていたのです。

 解説を読むと、「花のつぼみがゆるやかに開き、やがて花びらが環()となった指先からふくよかな薫りをはなち、和みゆくさまを表しています。」とあります。さらに、「令和の意味について、風和む初春2月に梅のつぼみが開き、蘭が薫りをはなつ、との説明などを引用しました。」とあり、指文字よりも味わいがあると感じたしだいです。

 これで、手話に関わる人にとっての、もう一の新元号発表が終了したのでした。