イノシシを参る

 来年の干支が猪という訳で、今日は名古屋市名東区の神社まで行ってきました。猪にまつわる神社としては、京都の護王神社が「いのしし神社」という別名で親しまれており、足腰の神様として人気です。猪は山の守り神、霊獣としている地域は数多くあり、古事記には、ヤマトタケルを滅ぼした、伊吹山の神である白猪が登場して、もののけ姫の「おっことぬし」のモデルとも言われているくらいです。また、猪の毛、たてがみや牙などが魔除けになるとか、猪の目をかたどった「猪目模様」(ハート型)にも魔除けの力があるといわれ、神社や仏閣はじめ、城などにも意外な場所にハート型を見つけることができます。
 そんな猪にまつわる神社の中でも、猪の文字がつく名古屋市名東区にある猪子石(いのこいし)神明社と周辺にある猪子石神社、そして関連する大石神社が今回の目的地です。猪子石(いのこいし)神明社は、平安時代初期の承和年間(834~848)に創建され、鎌倉時代後期には猪子石字水汲坂に鎮座され、その後に香流川氾濫のため、江戸時代初期に現在地へ遷座されたようです。
 実は、私が社会人になって最初に通った地が名東区で、懐かしい地名が多くあり、その頃は「いのこいし」ではなく「いのこし」と呼んでいました。猪子石の読み方は、「いのこし」と「いのこいし」が混在していて、どちらが正しくてどちらが間違いとも言えない状態になっており、一般的に地元の人間は「いのこし」と言っているようです。けれど、猪子石神明社近くにある郵便局は名古屋猪子石郵便局「なごやいのこいしゆうびんきょく」が正式な名称だったりします。
 この猪子石神明社は、猪に因んで足腰や、五穀豊穣・子孫繁栄のご利益があるとされ、境内にある末社の龍耳社は耳の神様として信仰されています。今まで干支にちなんだ参拝者が多くなかったのか、社務所に立ち寄ってお守りを受けた際、「忙しくなるんじゃないですか?」というと、「皆さんから言われますが前回の亥年はそうでもなかったんですよ。」、逆に、今年の戌神社(名古屋市西区)のフィーバーぶりや、マスコミからの照会が多くなったことから、「どうなんでしょうね?」と訊かれてしまいました。そのため、ホームページで急遽、駐車場が少ないことの周知を行ったり、来年の参拝者向けに猪に因んだ「御守」「授与品」の準備もしているようです。
 そんな猪子石神明社から西に600m程行ったところには、猪子石神社(香坂515番地)があります。そこには「牡石」と呼ばれる猪に似た石が祀られており、さらに、猪子石神社から南に600m程先には大石神社(山の手1丁目707番地)があり、やはり猪に似た「牝石」が祀られています。昔からこの二つの石はセットとして捉えられており、猪子石神社にある牡石は花崗岩で、半分埋まり、半分が露出して、大石神社にある牝石は、礫岩(れきがん)と呼ばれる火山岩で、牡石同様に半分埋まっています。牝石は噴火によって流れ出した溶岩が溶けて固まったもので、小さな石が集まってごつごつした姿から、「子持ち石」とも呼ばれ安産のご利益があるそうです。
 年末年始が混み合うことを予想し早めの参拝となりました。半分埋まった「牡石」や「牝石」のように、半分だけご利益があるのかもしれませんが、それくらいが丁度良いのかもしれません。欲張り過ぎないのが良いのです。ちなみに、「牝石」のほうは安産祈願で触れても良いのですが、「牡石」のほうは触ると祟りがあるそうですよ。
 なお、猪は足腰にご利益があるというのでお守りを受けたのですが、宮司の奥さんから「私も腰痛持ちなんです。」と言われてしまい、お守りのご利益の方は???ということかもしれません。まあ、信じるものは救われるということですかね。