新世界

 先日、大阪へ出かけた際にカフェ巡りやコリアンタウンを散策しましたが、これまで何度も大阪へ行くことはあっても、目的地以外に訪ねることはありませんでした。そのため、大阪観光には外せないスポットである「新世界」にも、未だに行ったこともないのです。安くて旨いB級グルメの店が軒を連ね、串カツやタコ焼きの本場である、ザ・大阪とも言うべき場所にもです。
 でも、「新世界」って名前は期待感の持てる名称です。由来を調べてみると、1903年に開かれた第五回内国勧業博覧会の跡地をベースに、1909年に大阪の財界が出資した大阪土地建物という会社が、あのあたり一帯の払い下げを受けて開発したそうです。その際に、「大都市にふさわしい模範的娯楽場を」と、パリとニューヨークを足して2で割った街を目指ということで、「新世界」いう名称で呼ばれることになったんだとか。ということは、大阪の新世界へ行けば、パリとニューヨークに行った気分になるかといえば、やはり、そこにはコテコテの大阪文化が詰まっているだけなんだろうな。(行ったことがないので。)
 新世界といえば、ブラジルにも新世界があります。それは、ポルトガル語でMundo novo(ムンドノーボ)と言われるコーヒー豆です。ムンドノーボは、インドネシアから移入されたティピカである「スマトラ」とブルボンとの交配によって生まれた品種で、1943年にサンパウロのムンドノーボ地区で交配が開始されたことから、この名前が付けられたそうです。ブルボンとは違い耐病性に強いため生産性が高く、安定して収穫できることから、ブラジルの多くの農家で栽培されており、お店で扱う2種類のブラジル産生豆にも主要な豆として含まれています。
 地球の裏側で生まれたムンドノーボは、今では遠く海を渡って沖縄の地でも育てられています。沖縄における本格的なコーヒー栽培は、戦後、和宇慶朝伝(わうけ ちょうでん)という人が、ブラジルの親戚からダンボール10箱ほどの苗を譲り受け、具志川で栽培を始めたのが最初だと言われ、和宇慶さんから教えを受けた恩納村の山城武徳(やましろ ぶとく)氏が、現在の沖縄コーヒー生産の礎を築いた人物として有名です。

 沖縄では、このムンドノーボを英語で、「ニューワールド」と読んでいます。南国イメージが強い沖縄ですが、気温がたいへん下がることもあり、コーヒー栽培には冬の時期の北風にできるだけ当てないなどの低温対策が必要となるようです。また、毎年のように襲ってくる台風も大きな障害となり、せっかく順調に生育したコーヒーの木が倒れたり飛ばされたりして大きな被害を受けることや、海水の塩分が強い風で飛ばされコーヒーの木に付着し、ときには葉焼けを起こすこともあるそうです。

 「新世界」という言葉から、大阪の新世界からブラジルのムンドノーボ、そして、沖縄のニューワールドへ話が飛びましたが、いずれも訪れたことのない場所です。せめて大阪の新世界くらいは行ってみようかと思いながら、新世界(ムンドノーボ)の入っているブラジルコーヒーを飲むことにしましょうか。