「駅」から「道」へ

 今日の午後は、焙煎機メーカーの富士珈機大阪本社で行われる、1kg焙煎機のメンテナンス講習会です。これまで、マニュアル片手に自己流でメンテナンスを行っていましたが、一度きちんと教えてもらおうと思っていたので、久しぶりに最寄駅のなんば駅までやってきました。
 せっかく大阪まで行くので、少し早めに出かけて自家焙煎店を巡ってみようと、なんば駅を起点として行ける店を探して電車に乗り込みます。迷子にならないよう、乗り換えを必要としない一つの路線に限定し、千日前線・野田阪神行に乗車りこみました。
 最初に向かった店はCAFÉ BAHNHOF(カフェ バーンホーフ)福島本店です。「カフェ・バッハの創設者、田口護が設計した世界に2台しかない職人技の焙煎機(マイスター)が最高のコーヒーを作り出します。」という謳い文句に導かれて玉川駅を降り、大阪環状線の高架下を高速道路が見える方へ歩くと、コーヒーを焙煎する心地よい香りが漂います。少し歩くと周囲のテナントとは雰囲気の異なるお店が見えてきました。店内に入るとテイクアウト専門のようですが、窓側にカウンターが設けられて飲むことができるようです。
 2年ほど前までは喫茶スペースがあったようですが、梅田・三番街店のケーキが好評のため、店内の半分以上を製菓用に改装したそうで、立ち飲みスタイルでパナマのドンパチ・ゲイシャとコーヒーのシフォンケーキをいただくことにしました。自分が焼くノンオイルのシフォンケーキのような柔らかさはないものの、細かく挽いたコーヒーが練りこまれた生地から、香りが鼻に抜けていきます。一度作ってみようかと思ったしだいです。
 そんな事を考えていると、上の方から「ガタンゴトン、ガタンゴトン」と電車が通過する音が聞こえます。電車の高架橋の下にある店だと思い出しながら、「なるほど!店名がドイツ語で駅だった。」と納得したしだいです。
 次に向かった先は、なんば駅に二駅戻った西長堀駅で降り、歩いて数分の所にあるCafé Weg(カフェ ヴェーク)です。ヴェークって言いにくい名前なんですが、ドイツ語らしいです。ホームページによれば、“「Weg」はドイツ語で「道」という意味です。ドイツのことわざに“Wo ein Wille ist、ist auch ein Weg”(意志あるところに道もある)というものがあります。これまで歩いてきた人生の道のりを振り返りますと、たくさんの人たちと出会い、助けられ多くのことを学ばさせていただきました。その人達との出会いに感謝し、これからもずっと大切にしていきたいとの思いを込め名付けました。 人の輪・縁が生まれ、つながりが広がっていくカフェにしたいと思っています。”とあります。
 なるほど、人生経験を踏んだ人が始めた店だと思いきや、意外にも若くて綺麗な女性が店主でした。店内はカウンターとテーブル席が一つという小さくまとまった作りで、窓際には5kgの焙煎機が設置されています。カウンターに座るとクラッシックの音楽流れ、落ち着いた雰囲気の中で、卵サンドとペールーのコーヒーをいただきました。コーヒーを飲みながら店主の動きを見ていると、業務用の小型オーブンを使ってケーキを焼いているようです。一人で焙煎から接客にお菓子作りと、何か自分と似ているようで、容姿の全く異なる部分に気づいて、笑みがこぼれてしまいました。
 「駅」から「道」へと自家焙煎店を巡りましたが、偶然にも両方ともカフェ・バッハで修行されたようで、ドイツ語の店名を付けられているものの、規模や雰囲気の異なる店づくりをされているのでした。