エルサルバドルの内戦(1)

 珈琲屋を開業する以前、コーヒーについて学んでいる時、ある方から「コーヒーの事を知るなら生産国の歴史も学びなさい。」と言われたこともあって、産地情報と同時に、その国の歴史や文化も知るように勤めています。今回は、お店ではコーヒー豆を取り扱っていないため、知ることもなかったエルサルバドルについて、『イノセント・ボイス 12歳の戦場』(2004年制作 メキシコ映画)という映画を通して、この国で起きた内戦のことについて理解を深めることにしました。
 なお、以前見た『ホテルルワンダ』も内戦を描いた真実に基づく映画でしたが、この映画もそう遠くない過去、エルサルバドルで起きた政府軍とゲリラとの内戦を、子どもの視点から描いた作品です。
 1980年、エルサルバドルは政府軍と、世界恐慌によって仕事をなくした多くの貧しい農民などで結成される反政府ゲリラとの激しい内戦下にありました。舞台は政府軍とゲリラの境界線にある小さな町クスカタンシンゴ。そこに住む11歳のチャバは母親と妹、弟と4人で暮らしています。
 家にも流れ弾がたくさん飛んでくる生活の中、家を出た父に代わって妹と弟をベッドの下で必死に守っています。しかし、12歳になると政府軍が強制徴兵にやってきて、学校の校庭で政府軍が先生にリストを渡し、名前を読み上げられた12歳の少年は政府軍に連れて行かれます。11歳のチャバの番もまもなくやってきます。
 チャバのような少年たちは政府軍か、反政府ゲリラか、道を選ばなくてはならず、友達と一緒にゲリラに志願しました。しかし、政府軍に捕まった彼らは河原の処刑場に連れて行かれ、友達が一人、二人殺され、次はチャバの番という時、ゲリラ達が反撃に出て一命を取り留め逃げ出すことができます。
 逃げる際に政府軍兵士の遺体からとった銃を手に取り、意を決して銃口を兵士に向けます。しかし、その兵士は政府軍に強制徴兵された友人のアントニーの姿でした。チャバは銃を捨てて逃げます。・・・・
 チャバに与えられた選択肢は少年兵になることしかありませんでした。愛するマリアを奪った政府軍は許せないし、ゲリラになれば政府軍に徴兵された友人と戦うことになります。かといって、政府軍になれば優しかった叔父さんの敵にもなります。そんな選択を小学生のような少年にさせてしまう内戦の現実を、ただ言葉もなく見ている自分がいます。
 映画の後半で、神父が「神がいるなら戦争は起こらないのではないかという人がいる。しかし、人々が神の法に従わないから戦争が起こるのだ。戦争は人々の心が生み出しているのだ」と村人達の前で話します。確かにそうかもしれませんが、なら神は見守るだけの存在であり、だから今なお紛争は絶えないのだと納得してみたり、何だか虚しく思えてきます。はたして、この映画を見ただけで、エルサルバドルの事を少しは理解したことになるんだろうか?