テレビをつまみに

 先日の『未来世紀ジパング』で、「変わりたいイタリア、変わりたくないイタリア」というテーマの放送の中、 バールVSスタバっていう切り口があったので、つい気になって見てしまった。でも、タイトルだけで中身のない内容のうえ、使われる時間も僅かということもあり、ちょっと残念でした。

 概要は、ホームページに要約された次の文章以上でも以下でもない。「イタリアの街中を歩くと目につくのがバール(BAR)という看板を掲げた店。バールとは・・・地域密着型のコーヒー店でありながら、朝昼晩の食事や、お酒も飲めたりするお店。客の多くはイタリア特有のエスプレッソを立ったまま飲み、数分で店を後にする。このバールは、イタリア全土に約17万軒あるといわれ、独自のコーヒー文化を形成してきた。こんな伝統を持つイタリアに、米コーヒーチェーン大手「スターバックスコーヒー」が初進出することが決まったのだ。この進出の話に、ミラノのBARの店主は戦々恐々。進出前にも関わらず、戦いが始まっていた!」

 たったこれだけの内容で、バールVSスタバという言葉で括ってしまうのはいかがなものかと思った。確かに、ハワード・シュルツ会長はイタリアのバール文化に感銘を受け、それを世界中につくりたいと語っており、スターバックスのイタリア進出は会長の悲願であることは分かるのだけど、バールはイタリア全土に約17万店あるいわれるほど、独自のコーヒー文化が根付いているので、対決構図よりもスタバがその中で共存できるために何をするのかって事が気になるところだろう。

 そんな翌日に、ヨーロッパで放浪の旅をしていたお客さんが来店されたので、イタリアのバールについて話を聞いてみました。朝は起きて直ぐにエスプレッソは刺激が強すぎるので、ミルクと混ぜて胃の負担を減らすカプチーノかマッキャート、午前の休憩に1杯、ランチ後に1杯、午後の休憩に1杯、夕食後に1杯、と1日に5杯は飲むのが一般的なイタリアでは、バールはコーヒーをサラッと飲みながらバリスタや馴染みの常連と軽い会話を楽しむ空間であり、知り合いにばったりあったら「立ち話もなんだからコーヒーを飲みながら」なんて気軽に入って、サラッと出る使い方をするところ。それに対して、スターバックスはコーヒーを飲みながら読書や勉強、親しい友人との会話をゆっくりと楽しむ空間だから、使い方が違ううえに値段が高いので、観光客しか使用しないんじゃないかっていう感想でした。

 30年前にもマクドナルドがイタリア進出で話題になったようですが、今では店舗数も増えており、観光地の店では観光客が大半の利用者となっているようです。しかし、ショッピングセンターに併設されたマクドナルドでは、家族連れが昼食を楽しむ場所になっているようなので、スターバックスもイタリアに合わせた形態に変化するんじゃないかってことのようです。

 バールについては、コーヒーだけでなくお酒も扱うことから、ビールやワインが安く飲める場所としての想い出を聞きながら、テレビをつまみに、ちょっとだけ海外旅行気分を味わうのでした。