餅は餅屋

 先日、コーヒーに添えるお菓子にとシュトレンを作って出したところ、意外に評判で喜んでいただきました。そして、数日たったころ「下石の町にもシュトレンが美味しい店があるから食べてみや~!」と化粧箱に入ったシュトレンを頂きました。

 いつも応援していただいているお客様によると、「いろんな店のシュトレンを食べたけど、ここのシュトレンは格別だよ。1年洋酒に漬けこんだドライフルーツから香る生地が最高だから、一度は食べてみなきゃいけない。」と言われました。

 このシュトレンは噂に聞いていた地元のエクレール(タナカ製パン)のシュトレンで、遠方からの注文に合わせて宅配しているとは知ってはいたものの、今まで食べたことがなかったのです。目の前に実物を見て感激すると同時に、毎回何かしら応援していただけるお客様に感謝するばかりです。

 エクレールという店名になったのはかなり前だと思うのですが、地元では「タナカパン」で名が通っており、大正時代からの老舗のパン屋さんです。小学校の給食に出されるコッペパンはタナカパンのもので、タナカパン=コッペパンというイメージが強いのですが、今では店頭に多くの菓子パンが並んでいます。私の一番好きなのはアンパンですね。

 シュトレンはレーズンとオレンジピールを洋酒に漬けたものがメインで、シンプルなものだけど奥深い味わいがあります。私のようにドライフルーツやナッツ類を詰め込んだものと違い、口の中で広がる香りがいつまでも残るところが、素人が遊びで作るものとの差が歴然としています。やはり、「餅は餅屋」という訳です。

 そんな事を思いつつ、いつものように歯を磨きながらブログチェックをしていると、『珈琲豆「ブルボンちなみ35分」をどうぞ。』という面白い文章がありました。ブラジルの農園2種を35分かけて深煎りするというもの、いずれもブルボンでパルプドナチュラルの豆だとか。35分!常識では考えられない焙煎時間に驚きながらも、「面白そうだからやってみよう!」と挑戦することにしました。

 午前中の空いた時間を見計らい、深煎りの煎り止め温度をおおよそ決め、35分間の温度上昇を分刻みに逆算し、何秒で1℃上昇させるか目安を書きだします。使用するコーヒー豆はブラジルのブルボン・アマレロで、もちろんパルプドナチュラルです。農園まで同じに出来ないまでも、雰囲気だけでも合わせてみました。

 お店では中煎り、中深煎りが中心の焙煎を行っており、これほどの深煎りへの挑戦は久しぶりで、時間も35分という長い時間のため、緊張する時間も長くなってしまいました。けれど、想像したほどスモーキーフレーバーは少なく、甘さもそこそこ感じられます。注湯温度を低めにしたこともあるでしょうが、一応飲めるコーヒーになっています。でも、35分も緊張する焙煎はしたくないですね。一歩間違えると黒焦げになってしまう。やはり深煎りも「餅は餅屋」ってことです。

 では、自分は「餅屋」なのかという課題がのしかかってきます。一応、珈琲屋と名乗っている訳ですから、自信を持って「餅屋」になれるよう精進しなければなりません。美味しいコーヒーが提供できるよう、肝に銘じなければ!