デカフェ

 コーヒー豆を販売する珈琲屋を始めて2年半が経過しますが、この間に数人お客様から「カフェインレスのコーヒー豆はありますか?」と尋ねられたことがあります。「残念ながら置いていません。」と回答したものの、できれば提供出来るようになりたいものだと思っていました。
 カフェインレス・コーヒーは、「デカフェ」と呼ぶことが多く、本来カフェインを含んでいる飲食物からカフェインを取り除いたり、通常はカフェインを添加する飲食物にカフェインの添加を行わないことで、カフェインを含まなくなったもののことを指します。デカフェ、カフェインレス、カフェインフリーなど呼び、コーヒー以外にも使用しますが、多くの方がコーヒーのカフェインレスとして認識しています。

 カフェインを取り除く方法には次のようなものがあります。
●有機溶剤による抽出法
 カフェインを溶解する有機溶剤に生豆を浸す方法。低コストですが、カフェイン以外の成分も溶出し、コーヒーの旨味や風味まで失われやすく、残留有機溶剤の心配から消費者が不安を抱きやすいという欠点があります。(日本では有機溶媒を使用したデカフェの販売が禁止されています。)
●水による抽出法
 まず、生豆を水に浸すことでカフェインを含めた水溶性の成分を抽出します。次に豆を一度取り出し、水溶液の中からカフェインだけを除去します。この時にフィルターを使用する方法と、有機溶媒を使用する方法があります。カフェインを除去した水溶液に再び生豆を浸すことで、コーヒーの味、香りや風味など必要な成分を戻します。有機溶媒を使用する場合も、直接コーヒーの生豆に溶剤が触れないため安全性が高いと言われています。
●超臨界二酸化炭素抽出法
 二酸化炭素を「超臨界流体」の状態にしてカフェインを抽出する方法。物質に一定以上(臨界点以上)の圧力や温度をかけると、その物質は超臨界状態になります。超臨界流体は「液体の溶解性」と「気体の拡散性」を併せ持っているため、コーヒー豆の内部への浸透性が高く、成分の抽出率に優れているとされます。特に、二酸化炭素は他の物質よりも比較的穏やかな条件で超臨界状態に達し、他の物質との反応性も低いことから、豆に負担をかけずに味や風味を損なうことなく、カフェインを除去できる安全性の高い方法として知られています。

 日本で流通している多くは、水による方法と二酸化炭素を用いる方法の主流で、お店で扱っている生豆商社では二酸化炭素抽出法の豆です。

 お客様からカフェインの摂取を気にする話をされると、「何とか提供出来ないものか」と思う反面、需要と供給のバランスを考えると尻込みしてしまいます。確かに、「デカフェ」に対する関心は昔と比べると高まっており、全日本コーヒー協会の資料を見ても、2000年の輸入量が2016年には5倍に増えているいます。けれど、コーヒー豆全体からみると、それでも約0.6%と割合的には大変少ないのが現実です。

 そもそも、カフェインに対する思い込みや誤解も多く、カフェインが苦みの元だと勘違いされ、深煎りにするとカフェインが増えるとか、カフェインが悪者扱いされ、少しでも飲まない方が良いといった過剰な反応など、誤解を解く必要があると考えますが、それよりも、安心して楽しく飲める「デカフェ」を提供した方が早いと思うのです。

 お店で提供するコーヒー豆は週に何度も焙煎し、新鮮なコーヒー豆を提供することを心がけているものの、「デカフェ」の需要は統計上からも僅かなため、実際に提供を始めるにしても、事前注文を受けてから焙煎するのか、決まった週のみ焙煎して利用してもらうか、など考えなければいけない課題があります。

 地元で営む珈琲屋だからこそ、高価なコーヒー豆を除いて「ありません。」とは言いたくないのが本音ですから。