盛岡の「ふだん」を綴る本『てくり』

 お客様から、岩手県盛岡市の新世代ミニコミ誌『てくり』(編集・発行:まちの編集室)をいただいました。新世代ミニコミ誌?とは何なのかよくわからなかったのですが、編集・発行元によれば、「ミニコミ」というと活字だらけで写真が無い、ガリ版刷り(?)なイメージですが、その「綴る」という気持ちを残しつつ、「タウン誌」でもなく「情報誌」でもない、ほっと一息つけるような「カフェ的」雰囲気のビジュアル誌をイメージしているらしい。確かに一般的なタウン誌や情報誌とこ異なり、広告が一つもなく、使用している紙質が厚い。尚且つ紙面が39ページで、売価600円という価格で採算が合うのか不思議に感じた。これは新世代と言ってもおかしくない!
 そんなことはさておいて、お客様がこの雑誌をくださった理由は、今回の記事が盛岡の自家焙煎珈琲のお店を紹介し、巻頭に「大坊珈琲店」の大坊勝次さんと、「機屋」の関基尋さんとの対談が掲載されているからでした。そのご好意に甘えて早速読んではみたものの、正直、二人の会話には特別新鮮なものは感じられません。(悪いって訳じゃないんです。)でも、この雑誌の紙面づくりには盛岡を愛している想いが詰め込まれ、盛岡出身の大坊さんが自然に馴染んでいるように見えます。色々な場所に登場する大坊さんを見ますが、しっくりしていると感じるのは、やっぱり故郷だからでしょうか。
 大坊さんの写真を見ながら、お客様とコーヒー談義で盛り上がったのですが、大坊勝次という個性的な人を知るに付け、その本人よりも奥様の事が気になり始めました。いわゆる珈琲馬鹿を傍らで見続けている人であり、珈琲に酔いしれて対談する男たちの内容とは違った、いわゆる別次元の話が聞けそうな気がします。
 今回の最新号『てくり』紙面には、盛岡市内の「機屋」をはじめとする個性的な自家焙煎店が9軒も登場します。以前から感じていた「東北には自家焙煎店が多くない?」って改めて思うのです。人口比率から言っても個性的な店が多いと思うのですが、気のせいなのかな~?その点をミニコミ誌をいただいた方と話したのですが、東北人は質素な生活だけど、一点豪華主義でコーヒーには強いこだわりを持っているのではないかということでした。流行に左右されやすい都会と違って、自分の意思で選択する東北の人々が想像でき、妙に納得するのでした。
 紙面の後半は「まめ」の話です。表紙に「マメなはなし。〜または、珈琲豆と枝豆と。〜」とあり、紙面構成は

・盛岡スコーレ高等学校 「花まめ」に託すもの。

・土地の豆に惚れた人々。〜秘伝/黒平豆

・つくってみました 豆料理いろいろ
 とマメな話が続きます。「まめ蔵」との親近感を持ちながら、ローカル・ネタだけどホッとする内容に、思わず「東北っていいよな~。」と思うのでした。震災の年に妻と岩手県内を巡りましたが、落ち着いた空気が大好きです。盛岡にも行ったのに、一箇所も珈琲屋に行かなかったことを後悔してしまいます。

 今日は台風が近づいてくるから、きっと来店数も少ないし、もう一度ゆっくり読み直しながら、盛岡の街を思い出してみます。