接ぎ木

 昨日のカットバック(剪定)の説明を書きながら、コナのグリーンウェル農園で見た接ぎ木を思い出しました。可愛いコーヒーの苗に丈夫そうな台木が接ぎ木され、青い空に向かって伸びている光景が記憶に残っています。

 一般的に接ぎ木は病害虫の被害を回避したり、品質や収穫量を増やす目的で行われ、良く見かけるのが青枯れ病対策のトマトや、表面に白い粉がない物を作るためのキュウリ(台木:カボチャ、穂木:キュウリ)、切り花本数を増やすためのバラ(台木:ノイバラ、穂木:バラ)があります。両親が家庭菜園をしていた時に、接木した苗を見ていたので、何となく接ぎ木の効果は理解していました。

 コーヒーでも接ぎ木が行われるところがありますが、その目的は線虫対策です。線虫は土壌の中に莫大な数いる小さな虫ですが、コーヒーの木に害をもたらす線虫は、根に取り付いて樹木の栄養分を奪います。根はしだいに瘤だらけとなって養分を吸収できなくなり、コーヒーの木を枯らしてしまう恐ろしい害虫です。昔は線虫用の農薬を使用していたようですが、強い劇薬のために現在では禁止されていて使えません。そこで、対策方法として主に接ぎ木手を行っているとの説明でした。

 品種改良されていない伝統的な品種は接ぎ木をしているところが多く、グアテマラではカネフォラ種(ロブスタ)を台木に使用していると聞いたことがあったのでスタッフに聞いてみると、リベリカ種を台木の使っているということでした。「リベリカ?あの薬品みたいな香りのするコーヒー!?」って思いましたが、台木に使用するだけでは本来の品種であるティピカの味には変化がないそうです。

 リベリカ種を台木に使用する理由は、ハワイの線虫が他国のものより強くてカネフォラ種(ロブスタ)では効き目が少いために、より強いリベリカ種を使用しているそうです。ただでさえ人件費などの生産コストの高いコナコーヒーなのに、こうした余分な出費が大変な負担になってしまい、自分には手の届かないコーヒー豆になるんだと感じたのでした。