ウィンナーコーヒー

 今日来店された数名のお客様が、ウィンナーコーヒーを注文しながら、ウィーンに旅行に行ったら「ウィンナーコーヒーを飲まなきゃね」と話されていました。海外旅行でヨーロッパへ行かれた話題の最中だったので、タイミングが良かったかも知れません。

 お店のメニューには確かにウィンナーコーヒーがあるのですが、実はメニューを決める時には少し迷いました。もちろんウィンナー付きのコーヒーで迷った訳ではなく、そもそもウィーンにはウィンナーコーヒーがないからです。ウィンナーコーヒーに似ているのは、「カイザー・メランジュ」か「アインシュペンナー」になるからです。ウィンナーコーヒーとはオーストリアの首都ウィーンで発祥したコーヒーの飲み方を日本が勝手に解釈して名付けたコーヒーの事で、ウィーン風のコーヒーということですが、発祥地のウィーンでは「カイザー・メランジュ」(単にメランジュ)が日常的に一番よく飲まれているコーヒーなんだそうです。

■「カイザー・メランジュ」

手鍋に、深煎りコーヒーと卵黄、グラニュー糖、牛乳を入れ、弱火にかけてホイッパーでかき混ぜ、70°ぐらいになったら火から下ろしてカップに注ぎます。この飲み物は、オーストリアのハプスブルク家の皇帝(カイザー)が好んだといわれています。

■「アインシュペナー」

カップやグラスに深煎りのコーヒーを入れ、ホイップクリームを浮かせます。ウィーン式提供法ではトレイに受け皿をのせ、その上にコースーターを敷き、そしてコーヒーカップをのせます。一緒に砂糖を入れ、水用タンブラーをのせ、タンブラーの上にスプーンをのせるという面倒そうなものです。

 日本でいうウィンナーコーヒーと同じようなホイップクリームをのせたコーヒーは「馬車を操る者」という意味の「アインシュペンナー」という名称のものらしく、元々はウィーンの馬車守が寒い中主人を待つ間に飲んだコーヒーで、コーヒーが冷めるのを防ぐために上にホイップクリームをのせたという説があります。

 メニューを決めるにあたっては、こうした事もあれこれ考えたのですが、結局のところ珈琲屋としての試飲スペースといった考えで、シンプルなメニュー構成にしようと決めたのでした。