肩書き

 先日友人から、こんなメールが届きました。「〇〇市の〇〇コーヒーの焙煎豆をいただきました(秋限定)。添付冊子も読み、 国際審査員、こだわりの豆を直接輸入とか・・・味は人それぞれで、印象としては、まめ蔵とそんなに変わらない感じがしました(と言うことは、良い豆をまめ蔵では提供していると言う事ですか?ははは!!!)それでは」

 何とも他愛もない内容でしたが、そのコーヒー屋さんには行ったことがあり、私自身も特別な美味しさを感じませんでした。お店の常連さんも噂を聞きつけて買いに出かけとたそうですが、「焙煎日はいつですか?」と尋ねても、店員さんは「分かりません。」と言われてがっかりしたと言っておられたのを思い出します。

 まめ蔵で使用している豆は、一般的にスペシャリティーコーヒーと呼ばれる品質のものです。けれど、お店では「スペシャリティーコーヒーの店」などと宣伝している訳でもなく、単に高品質の豆を使用しているくらいしか話していません。その理由は、特に肩書を必要としないと考えているからです。お店を大きくしたいとか、店舗を増やしたい、従業員を雇っているとかの事情があれば、商売上の肩書はとても大切な宣伝ツールになりますが、私は地元の珈琲屋さんを長く続けたいだけなので、今のままで構わないと思っています。

 友人の話に出てきた珈琲屋さんのように、「国際審査員のいる店」っていうのはは、一度は飲んでみたいという興味が湧きます。ですから、遠方から訪れる方も多いのでしょうね。多くは「Qグレーダーの店」というのがあり、Qグレーダー資格試験に合格した優秀な方が居るお店にも何度か行きました。面白いのは「焙煎士」という肩書です。何の資格制度もありませんが、「焙煎士のいる店」ってだけで違いの分かる珈琲屋さんって感じになりますね。さらには「プロ焙煎士」ってのや、「天才焙煎士」ってのも出てきて、思わずツッコミをいれたくなります。けれど、こうした肩書は商売上には大変有効なものになるのです。コーヒー豆を見るのではなく、肩書で判断してしまうのが人間なんですから。

 こうした肩書や広告宣伝方法に意見する気もなく、ただただ傍観しているのみですが、その人達がどのような考え方で焙煎をしているかは大変興味があります。私自身が焙煎を始めるまでに多くの方に会って話を伺いましたが、焙煎に対する考え方は様々でした。特別なルールや基準が存在しない(焙煎度合はあります)訳ですから、熱の加え方や加熱時間、生豆の状態まで、焙煎する人の考え方しだいなのです。だからこそ、同じ豆を使っても味に差が出てくるから面白いのかも知れません。

 ちなみに、「焙煎士」になれる通信教育ってのもありましたが、そこに魅かれる人もいるなんて驚きでした。