神の舌

 前回、「カップ・オブ・エクセレンス」という品評会について記載しましたが、その審査する人達は、「米国スペシャリティーコーヒー協会」が作成した「コーヒーテイスターズ・フレーバーホイール」という「共通言語」を使用して味覚審査するのです。そうした一定以上の味覚評価のできる人は「Qグレーダー」と呼ばれる有資格者で、まさに「神の舌」を持つ人々なのです。

 Qグレーダーとは、SCAA(米国スペシャルティコーヒー協会)が定めた基準・手順に従いコーヒーの評価(グレーディング)ができると認定された技能者のことであり、SCAAが定めるスペシャルティコーヒーの基準を知り、判定する能力が必要です。判定に必要な能力(一般知識、味覚、嗅覚、官能評価、生豆評価)は8科目19項目に及び、全ての項目に関して、試験に合格した者をQグレーダーとしてCQI(Coffee Quority Insutitute)が認定します。

 この「神の舌」を持つ人々が近年急増していて、正式発表はないものの、過去のネット記事を参考にすると、2011年には1,500人が2015年には3,700人と増え、2012年の韓国中央日報の記事では4分の1の韓国人だというのです。2009年には韓国で4人だけだったQグレーダーが、コーヒー専門店ブームとともに急増したそうです。絶体音感の人も近所にいてびっくりしたものですが、「神の舌」を持つ人の急増にもびっくりです。ちなみに、日本人のQグレーダー数は約280人(2015年時点)だそうですから、韓国には当然抜かれているんじゃないかな?
 Qグレーダーはカッピングによりコーヒーを点数評価するのですが、80点以上のコーヒーは、以下のように大別されます。
■80点以上:フレーバーは生産国や産地が分かる程の明確な特徴を持たないが、クリーンカップで品質が高いコーヒー
■85点以上:フレーバーで生産国や産地が分かる程の明確な特徴を持つコーヒー
■90点以上:フレーバーで生産農園が分かる程の明確な特徴を持つコーヒー

 興味深いのは、このSCAAのカッピング時の焙煎度合いは、色目基準であるアグトロン55前後を基準する浅煎りという点です。焙煎を浅くすることで酸味が際立ち個性もハッキリするというのが理由ですが、一般的に多くの店頭に並ぶのは中煎り以降であることを考えると、そのへんの乖離が無いのか気になります。もっとも、都会のコ洒落た自家焙煎カフェでは浅煎りが多いので良いのかもしれませんが。

 花粉症持ちの私には、当然「神の舌」など持ち合わせていませんし、「美味しい」「不味い」くらいしか判別できません。それに、「Qグレーダーのいる店」なんて広告宣伝に利用するほど忙しくないですから。