代用コーヒー

 お店の花壇の脇にタンポポが咲いています。タンポポを見ると思い出すのが、子供のころに学校の先生から、「タンポポの根からコーヒーを作るんだよ!」って教えてもらったことです。もちろんコーヒーは苦いものだという印象しかなったため、土手に生えているタンポポを引っこ抜いて根を確かめたくらいでした。

 大人になってから、日本では戦中戦後の物不足の際、コーヒー愛飲家がタンポポの根や大豆などを煎って代用コーヒーとして飲んでいたことが分かったのですが、珈琲屋を始めると決めてから色々な本を読むと、ヨーロッパで盛んに代用コーヒーが作られていたことを知ったのです。

 時代は18世紀のころです。植民地をもっていなかったドイツにとって、増加して行くコーヒー消費量は一方的な通貨の海外流出となり、国益を悪化させるばかりでした。そこで1777年にフリードリッヒ大王は、「コーヒー禁止令」を布告しました。1781年ついに「王室以外でのコーヒーの焙煎を禁止」し、コーヒーは貴族や司祭、将官といった上流社会のみが独占するものとなってしまったのです。

 さらには、1806年にナポレオンによる大陸封鎖令が行われ、コーヒー豆も手に入らなくなります。そんな中で成長を遂げたのが「代用コーヒー産業」でした。コーヒーにかわる飲物として「チコリ・コーヒー」の需要が増し、代用コーヒーの原料は、麦芽、大麦、ライ麦、サトウキビ、いちじく、南京豆、大豆、ドングリ、更には海草にまで至ったそうです。

 そうした背景があって、ヨーロッパではいまだに代用コーヒーが飲まれており、その代表的なものがフランスのLEROUX(ルルー)社が作るチコリ・コーヒーです。なんと、1858年から続く伝統ある会社で、年間8万トンのチコリの根をフランス北部で栽培し、各種チコリ製品を製造販売しています。

 そんな訳でルルー社のインスタント・チコリ・コーヒーを飲んでみました。・・

・・??色はコーヒーと同じなんですが香りは全く違います。コーヒーと言うよりキャラメル風味のドリンクなんでしょうね。フランスらしくミルクとの相性がよさそうです。カフェインゼロだから女性にも受けるかも?でもコーヒーじゃないですね。

 代用コーヒーとして、ヨーロッパで飲まれていた時代を想像しながら、昼食後の一杯を楽しむのでした。