コーヒーを食す!?

 コーヒー飲用の最初は、コーヒー豆は焙煎されていませんでした。果肉を食べたり、果肉でワインを作り、果肉を干して煮出したり、コーヒー豆をボイルして、焙煎という発見が行われるまでは薬用目的だったのです。現在でも、コーヒー発祥の地と言われるエチオピアでは果肉を干した物を「ホチャ」、イエメンでは「ギシル」として飲用されていますし、お店でもエルサルバドル産の「カスカラ」を提供していますが、コーヒーの実を全てを利用していたのでした。それが、1200年代に入り豆を煎ることで、イスラムのスーフィー達によって清貧行に用いられ、メッカ巡礼に訪れた人々にコーヒーの飲用が広がった歴史があるのです。

 そこで、ふと考えたのです。コーヒーの果肉はコーヒー農園で食べたし、コーヒーの果肉の乾燥したものはカスカラで飲んだし、そうだ!?コーヒー豆は食べていない!そんな訳でコーヒー豆を食すことにしたのです。もっとも、色々コーヒー豆を食べた体験談を調べてみると、「美味しくない」「お腹をこわした」などといった芳しくない情報があったので、正直これまで実行してこなかったのが本音なのです。けれど、今回は意を決して挑戦いたします。

 先ずは、前日に生豆を水に浸して一昼夜置いた後、豆を沸騰させてから弱火にしてコトコト4時間煮てみました。いわゆる煮豆の要領です。途中に灰汁が出るので何度も水を変えて行うのですが、どうも様子がおかしい?確かに生豆よりも煮豆の方が2倍ほど大きいけれど、煮豆はゴムのように中途半端に硬いのです。イメージではお粥のようになると考えていましたが、一向にその気配がありません。諦めて手で割ってみるとサックリと割れます。口に入れるとザクザクといった触感で青臭い生豆の匂いが残っています。本当にこんな物を食べていたのか?と疑問が湧いてきました。

 そんな思いもよらぬ結果となったので、改めて信頼できる本の「コーヒーの科学」を読んでみました。すると、10世紀のペルシャの医学者が書いた本には、「果実や種子を煮出して作るブン/ブンカという薬」として出ていました。こりゃ間違えた!煮込んだ豆を食べるのではなく、煮出した汁を飲むんだ!嫌な臭いがするから何度も水を変えてしまったではないか!でも、相当不味そうだったけどな~。「良薬は口に苦し」とは言うものの、もう一度試す気にはなれなかったのでした。