ブラジルの不毛の大地「セラード」開発の奇跡

 ファスナーで知られるYKKグループがブラジルに広大な農場をもち、約30年にわたってコーヒー事業を続けており、今月、東京都内にカフェを開いたというニュースを見ました。YKKは、1972年にファスナー事業でブラジルに進出し、そこでの利益を投資し、地元に貢献しようと、85年にブラジルでコーヒー事業を始めたそうです。その自社農園はブラジルの中央高原地帯セラードだといいます。
 「セラード」はポルトガル語で「閉ざされた」を意味する言葉で、ブラジルの不毛の大地と呼ばれた場所でした。同時にコーヒー産地として知られている「セラード」。 この場所の特別な意味について、久しぶりに『ブラジルの不毛の大地「セラード」開発の奇跡』(本郷 豊、細野 昭雄:著)を取り出して読んでみました。

 ブラジルに「緑の革命」を起こしたといわれるセラード農業開発。ブラジル政府が国家プロジェクトとして着手してからわずか20年余りで、不毛の大地は南半球最大の農業地帯に生まれ変わりました。そして、「20世紀の農学史に輝く偉業」と称されるその陰で、日本の協力が大きな役割を果たしていたことが、NHKのプロジェクトXに登場するようなドキュメタリーとして記録されています。

 改めて、日本のODAやJICAの長年にわたる取り組み、ブラジル移民やその二世のフロンティア精神に感心するとともに、日本人であることへの誇りさえ感じてしまいます。ただ、一方で、日本が開発に大きく貢献したにもかかわらず、主要作物の大豆などの取引に関しては、穀物メジャーが独占的に扱っており、日本は大きく遅れをとっているのです。日本的な奥ゆかしさというべきか?

 また、開発には必ずつきまとう環境破壊という問題もあります。その点については、TV Brasil(公共放送)の作成したセラードの生態系的危機の特集番組があったので、動画を張り付けておきます。