いつもの場所で

 今日もいつもと同じように家を出て、開店の準備をしながら不足したコーヒー豆を焙煎しました。その日によってケーキを準備したり、クッキーの生地作りなどを行うのですが、開店後に来店される方のために、少しばかりトーストと卵も用意します。

 実のところ、お店を始めてから頻繁に来店される、ある年配のご婦人のためにトーストと卵を用意しているというのが本音かもしれません。「私はコーヒーの味は分からないけど、ここのコーヒーは美味しいわ。」そう言いながらカウンターの隅に座り、「ありがとう。」と何度も言ってコーヒーを飲み、美味しそうにトーストを食べられます。卵は決まってスプーンで叩いて殻を割り、こぼさないように注意をはらっている姿を見ながら、高齢にはキツイ距離を歩いてこられる様子を想像し、「今日もお会いできて良かった。」と思うのです。

 そんなお客さまがいつも座られる場所に空白の日が続くと、ついつい心配になるのですが、どうも入院されたという話を聞き、心配と同時に寂しくなるのでした。