コーヒーカップ

 開店までの数か月の間に、準備しなければならない項目は山ほどあります。まだまだ時間を掛けたいものもありますが、進めることのできるものは随時行っています。その一つとして、コーヒーカップなどの食器の発注です。コーヒーとデザートをメインに考えているので、食器点数が若干少なくて済むため、保管場所も困らないだろうと、ガラス製品を除いて発注しました。

 開業を決めた時は、一般的なコーヒー専門店のように、マイセン、アウガルデン、ウエッジウッド、ローヤルコペンハーゲンなどの有名外国製品や、ノリタケ、ナルミの国内ブランドをカウンター前の棚に並べるかどうか迷っていました。そんな時、「あなたが売るのはコーヒーではないんですか?」と、ある人に言われて迷いが消えました。そこで、実用性のあるコーヒーカップを選ぶことにしたのです。

 今、イスラム圏に関することが話題になっていますが、喫茶という空間を街中に築いていったのはトルコ周辺のイスラム圏なのです。 当時、コーヒー豆は貴重だったため、飲むときには小さな器を使用していました。コーヒー飲用がヨーロッパに伝わったのは17世紀はじめで、 当時ヨーロッパには磁器を作る技術がなかったために、中国から買い付け、 磁器は瞬く間に貴族たちに大人気となったそうです。18世紀初頭、マイセン窯がハンドルのあるコーヒーカップを作るまでは湯呑みが使われていたという話です。画像は、 そのころのマイセンが東洋の器を真似て作ったカップ&ソーサーです。綺麗ですが、やはりハンドルがないと使いにくそうですね。

 コーヒーが95℃前後で抽出され、カップに注ぐと美味しく味わえる適温の62〜70℃になります。しかし美味しいと感じるのは60℃までともいわれているため、これ以上冷めないように工夫が必要です。冷めにくい素材や厚手の形の器を選んだり、急激に冷めないようにあらかじめカップを温めておくことも大切になります。 また、漆黒色のコーヒーをより美味しそうに見せるには、真っ白な磁器のカップであれば、深みのある液色を際立たせることができます。そんな理由からボーンチャイナのコーヒーカップを選びました。シンプルだけど飽きのこない食器だと思ったからです。

 食器棚に綺麗なカップを並べるのも憧れますが、「洋服屋さんがハンガーばかり並べているのと同じだ。コーヒー屋ならコーヒー豆を並べなさい。」と言われてたこともあり、何にこだわるのか考えさせられたコーヒーカップでした。