店に飾る絵

 10月末、店舗に飾るための絵を、瑞浪市稲津町在住のイラストレーター中山尚子さんにお願いしました。作品は宮沢賢治の「よたかの星」を題材にしたもので、その中の4点をジグレー版画にしてもらうことになっていました。

 今日、作品が完成したという連絡を受けて訪問のうえ受領し、そのまま瑞浪市の「オギソ画材」へ持ち込み、額の装丁を頼んできました。ちなみに私が選んだのは、左の画像にある「哀しみのよだか」「お日さん」「星とのかたらい」「最後の願い」です。

 「よだかの星」のあらすじは次のようなものです。主人公よだかは容姿の醜さから他の鳥に馬鹿にされています。鷹から名前を改めるように迫られ、従わなければ殺す言われたたことをきっかけに、弱肉強食の生き物の世界で生きることへの絶望を深めたよだかは、星々に自分も星にしてほしいと願います。星々はよだかの願いを叶えてはくれませんでしたが、よだかは自らの力で空高く舞い上がり、ついに燃え上がって星になるのでした。

 「よだかの星」という作品は前半で、弱肉強食の生き物の世界を描き、中盤では、よだかが星に救済を求める姿を描き、後半では、よだかが自らの力で舞い上がり、燃えて星になるという、賢治らしい難解で奥の深いものとなっており、普通の小説や物語の顛末でなく、宇宙観とか、生命観をも感じる作品です。

 メルヘンチックなイラストとは裏腹に、とても切ない話ではありますが、現実に社会とは本当に冷酷な一面を抱えており、賢治の頃も今も、世の中は、不条理なことで溢れています。時代は大きく変わっても、人が持つ心の闇は変わらないんだということかもしれません。

 そんな読者の解釈に想像の余地を残させる作品を、店舗に飾る作品に選んだかというと、もちろん中山さんの作品が好きだということもあるのですが、手話サークルで障がい者との関わるなかで、自分自身も差別意識と向き合いながら生きている事への戒めであったり、飲食店という立場から、食物連鎖を意識し同時に感謝していくことを忘れないためもあります。コーヒーは植物ですが、それを栽培して流通させ、自分たちの口に入るためには多くの人が関わりますが、その関わり方には「よだか」と同様に上下関係が存在しています。また、そうした現実を理解しながら、自分がお店を通してどのように表現し、何を実現していくか「よだかの星」と違ったストーリーを描いていくのが目標です。